仮設で営業続ける理髪店=被災者同士、離れ難く-自宅再建後も通う・熊本地震3年

 熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県益城町の「テクノ仮設団地」に、1軒の理髪店がある。団地入居者はピークの半分以下の約600人となり、店主も元の土地に自宅兼店舗を再建したが、「ここにおって」との入居者の声に応え営業を続けている。
 「カットサロンらいむ」を切り盛りするのは吉本洋子さん(66)。同町の自宅は大規模半壊し、21年前に開業した店舗は全壊。残ったのは、はさみとくしだけだった。
 避難所で1カ月間、ボランティアで髪を切った。「生活に張りを持たせないと」。同じ経験をした客と交流するうち、自身が励まされていった。
 震災3カ月後に団地に入居。その後、団地内のプレハブ商店街の一角に仮店舗を構えた。洗面台や理容椅子は借りてそろえた。赤白青のサインポールは、全壊した店から運び出して入り口に置いた。被災し散髪できずにいた高齢者が次々に訪れた。
 団地に一人で住む野々村ルミ子さん(85)は「地震前に通っていた店はバスじゃないと行けない。ここにあるのはありがたい」と1~2カ月に1度利用する。吉本さんとのおしゃべりが楽しみで毎日のように通っていた女性は「商店街に買い物に来てポールが回ってない日は寂しい」。
 開業当時から通う安尾博文さん(66)は「団地で店が再開された時はうれしかった。お互い冗談ばかりで、楽しい時間なんだ」と話す。店内にはいつも笑い声があふれる。
 2016年末、吉本さんは自宅兼店舗を再建した。しかし「団地で出会ったお客さんがまだ残っている。そう思うと離れられなかった」。団地の入居期限は原則2年。18年7月、町に入居継続を申請したが認められず、自宅に住むことになった。
 道具を持って5キロ以上離れた団地に一人で通うのは困難だった。新店舗に来る客もいる。それでも、「団地にはお年寄りもいる。皆さんがいるからやらないと、の一心だった」。週4日は新店舗に立つが、家族に車で送迎を頼み、団地内の仮店舗でも週2日の営業を続ける。
 来春には町の災害公営住宅が完成し、団地を退去する人が増える。吉本さんは「皆さんがいる限り続けますよ」と笑った。 
〔写真説明〕仮設団地内の店舗で、野々村ルミ子さん(手前)の髪を整える吉本洋子さん=4日、熊本県益城町


externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)