ハナレグミさんの歌声で心が一つに…今の福島に生きる人たちとつながりを「SONG OF THE EARTH FUKUSHIMA 311」②

 2019年3月11日、福島県は爆弾低気圧に襲われ、昨晩から降り続く雨と強い風が吹き荒れていました。「震災」「津波被害」「原発災害」の三重苦を福島が背負ってから8年。福島県のまとめでは、4万1299人(2019年2月)が県内外で避難を続けています。これまでの日本の震災では約3年で大部分の仮設住宅はなくなってきましたが、現在の福島には未だに先が見えない、故郷にも帰れない人々がいます。そこに福島の問題の特殊性を感じるのです。いわれない事実で被害を及ぼされる風評。記憶や印象が月日とともに薄れていく風化。一見矛盾する概念、風評被害と風化問題が混在し、今の福島を知るには、テレビからの映像ではなく、自分の眼で見るしかないのかもしれません。

午後2時46分、静寂につつまれるなか、黙祷

「SONG OF THE EARTH 311」

 東日本大震災と東京電力第一原発事故からの復興を願うフェスティバル「SONG OF THE EARTH 311」は、3月10日に引き続き、3月11日にJヴィレッジ(福島県楢葉・広野町)で開催されました。雨と風が続く会場に到着すると、会場のレイアウトが一変していました。

「SONG OF THE EARTH 311」

LOVE FOR NIPPONのスタッフの方々が、来場される方にとって居心地のよい空間となるよう、昨晩そして早朝と大掛かりな作業をされた旨、代表であるCANDLE JUNEさんから説明がありました。

黙祷

開催が危ぶまれる状況にもかかわらず、平日の月曜日、オープン当初から多くの方がJヴィレッジに集いました。意志ある人々の想いが届いたのかのように、雨が止み青空から陽が差し始めます。震災が起きた午後2時46分、静寂につつまれるなか、黙祷を行うことができました。

CANDLE JUNEさんによる挨拶

黙祷後に、CANDLE JUNEさんによる挨拶がありました。
「昨日テレビをつけて、津波や水素爆発など、流れる映像に何か違和感のようなものを感じました。大切な誰かをなくし、もしくは故郷を追われ、それでも8年をかけて、新たな営みを立て直して生きている人にとって、そういう映像を311に見ることは、彼らを辛い当時に引き戻し、その記憶に縛りつけるだけなのではないか? そう思いました。だから、メディアで知るだけではなく、ここ福島にきて福島の人たちと触れ合って欲しいのです。ただ辛い過去を振り返るのではなく、今の福島で、今の福島に生きる人たちとつながりをつくってほしいのです。僕は信じています。これだけの経験をした福島の人たちは、今度いつか、世界の何処かの大変な思いをするかもしれない人たちの大きな助けになるだろうと。そして、福島ありがとう、そう言われる日が来ることを。」

CANDLE JUNEさんは、東日本大震災以降、いち早く被災地に入り支援活動を続けてきました。3月14日には、多くのミュージシャンを始めとしたスターター(賛同者)とともに「LOVE FOR NIPPON」を立ち上げ、被災地での炊き出しや物資提供、ヘルスケア、理美容などのビューティーケア、ライブやパフォーマンスなどのステージ、チャリティーマーケットやインターネットオークション、様々なワークショップなど、複合的な活動を展開しています。毎月11日の「月命日」には必ず東北でキャンドルを灯し、ほぼ毎週のように東北の各地に足を運び、現地の人に寄り添い、声を聞き、ニーズを汲み取っています。

一方で、その絆が強いからこそ、新たにその輪に入ることへのためらいや後ろめたさがある方もいるでしょう。その心を汲み取るかのように、“今さら”ではなく”今だから”や”今から”がとても嬉しいことを熱く伝えていました。その場にいることの9年目からくる“気恥ずかしさ”を払拭する瞬間でした。それぞれのタイミングがあること、一歩踏み出すことに勇気がいること、疎外感を知っていること、様々な経験からくる配慮です。年に一度の式典ではなく、福島の人々とのつながりや積み重ねてきた歩みは、LOVE FOR NIPPONのサイトのレポートや月命日のメッセージ(Candle 11th)で綴られています。

「SONG OF THE EARTH 311」
写真:(SOTE311提供)

ステージでは、多数のアーティストが全員登壇してブルーハーツの「青空」が歌われ、会場にいる人の心が一つになっていきます。福島県川内村出身の渡辺俊美さんは、「8年間、悲しい別れもあったけど、たくさんのかけがいのない出会いがありました。3.11に、このステージにいることを感謝しています。」と、故郷福島への深い愛情を歌に込めました。

ワークショップを楽しむ子供たち

会場では、多くの子供達が笑い声をあげながら、様々なワークショップを楽しんでいます。

「SONG OF THE EARTH 311」キャンドルナイトを準備

キャンドルナイトの場所は、前日のサッカーグラウンドから、ステージ近くのカフェエリアに移動されました。まだ強風が吹くなか、LOVE FOR NIPPONの皆さんが、心を込めて必死に準備をされていました。その中に、当日もステージ、出店者のブース、地元の方々と、あらゆる場所を駆け回っていたCANDLE JUNEさんの姿もありました。

「SONG OF THE EARTH 311」CANDLE JUNEさん

毎月11日、福島の仮設住宅を中心に、灯りをともし続けた皆さんの姿に、紡いできた心のつながりが見えました。

福島県Jヴィレッジ・キャンドルの灯にともる想い

「SONG OF THE EARTH 311」ハナレグミさん
写真:ハナレグミさん(SOTE311提供)

日が暮れて、2019年3月11日、福島県Jヴィレッジに灯がともりました。ハナレグミさんの「家族の風景」の“どこにでもあるような家族の風景”の歌詞が、キャンドルの灯に溶け込みます。青谷明日香さんの、この日のためにつくられた「To the park」の歌が、ステージエリアを貫くサーチライトを通して天につながります。

大切そうにキャンドルの輪に灯をともす

幼子が風で消えた自分のメッセージが書かれたキャンドルホルダーに灯をつけてもらい、大切そうにキャンドルの輪に戻していました。この場所にいられることに感謝し、有難く思いながら、私は8年前の4月を思い出していました。

 2011年4月、私はヨーロッパ系外資企業に在籍しており、東京本社機能やスタッフを大阪に移動する役割の一部を担っていました。ヨーロッパ本社の強い意向とはいえ、福島県いわき市にある工場が稼働に向けて昼も夜もなく奮闘している中、本社機能を大阪に移すことに大きな違和感や疑問を抱え、葛藤の中日々を送っていました。一方で、日本を応援する海外各地の同僚から多くの激励のメッセージを受けました。彼らは、ニュースで受け取る惨状に涙を流し、そして強く立ち上がる東北の人々に驚き、感動していました。8年たった今でも、3月11日にメッセージを受け取ります。

「今の東北の状況は?福島の方々は?」

今年は、海外の友人にも「福島の今」を伝えられそうです。

福島県Jヴィレッジで見た数々の笑顔、震災を知らない福島の子供が元気で走り回っていること、福島と深くつながる人たちの活動、福島の今を生きる大人たちに学ぶこと、そして3.11に福島で過ごすことができた自身の感情、ここで新たなスタートをきれたこと。

もうすぐ福島も桜が咲く季節を迎えます。桜を仰ぎ見るとき、ふるさとを思い出す日本人は多いでしょう。心に残っているふるさとの原風景が変わっていることに心を痛める人もいるかもしれません。しかし、今元気に走っている子供達の心に残る風景が、夢あるものであるようにと奮闘する福島で生きる人、その福島の方々と強い絆を持つ多くの人がいます。悲しみと強さとやさしさを知る人々が、その後の熊本地震、西日本豪雨、北海道地震と、災害からの苦しみに力強く寄り添います。その姿に、四方に枝を広げ、垂れた枝に紅色の可憐な花を無数に咲かせ、ため息がでるような迫力で世代を生き抜いている、一本桜の銘木「三春の滝桜」を思い浮かべるのです。

一本桜の銘木「三春の滝桜」

N.Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・フォトグラファー。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。

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