
2019年で70回目の開催となるさっぽろ雪まつりは、200基近い雪像・氷像が例年200万人を超える観客を迎える、北海道を代表する一大イベントです。市民や陸上自衛隊の方々が協力して創られる像は、まさに芸術です。今年は雪まつり期間中、北海道に大寒波が訪れていましたが、春節と重なり海外からの観光客も多く、連日盛り上がりを見せていました。札幌の都心を横切る「大通公園」で開催の大通会場では、バラエティ豊かな雪像や氷像が1.5キロメートルもの長さに並べられます。
大通会場1丁目の「J:COMひろば」では、野外スケートリンクが登場しました。子供を対象としたスケート教室も開催し、今年は国内外で活躍する安藤美姫さんが講師を務めました。夜は会場全体がライトアップされ、幻想的な空間でスケートが楽しめます。
大通り4丁目会場では、70周年記念イベントとしてデジタル技術と雪まつりが融合し、音楽の楽しさ”をテーマに、バーチャルシンガー・初音ミクと、人気アプリゲーム「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」の戸山香澄がスペシャルセッションを繰り広げました。音と光、映像が織りなすハードロックな世界を多数の観光客が楽しんでいました。
大通5丁目東会場「道新 雪の広場」において、北海道を代表する名所をバックに疾走するサラブレッドの様子を表現した大雪像がありました。この大雪像は、馬産地北海道の厳しい自然の中でたくましく育つ競走馬のように、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震の困難を乗り越え、力強く歩んでいきたいという願いが込められています。
夜間には、北海道で産まれ、鍛えられ成長し、レースへと挑んでいくサラブレッドをイメージした、疾走感あふれる音楽と照明によるライトアップショーが行われました。
大通会場大通公園8丁目「雪のHTB広場」で、貨物列車をモチーフとした大雪像「届いた当たり前が、届ける喜び~今日も走るレッドベア~」の展示です。JR貨物の機関車「DF200」(通称レッドベア)と「EH800」をモチーフにし、「レッドベア」がトンネルから飛び出してくる姿を再現しています。
この大雪像の展示に合わせて、光り輝く映像が音楽とともに大雪像に浮かび上がる「プロジェクションマッピング」が行われました。
「北海道の貨物列車は新鮮な生産品などを道外へ、飲料や生活雑貨などを道内へ、毎日列車に乗せて行き来している。『貨物列車でこれも運んでいるの?』という驚きと発見を体験してもらいたい」との願いが、楽しく表現されていました。
大通西10丁目「UHBファミリーランド」では、シリーズ新三部作の最終章『スター・ウォーズ/エピソード9(仮題)』の公開を記念した巨大雪像もありました。制作にあたっては約3,000トンもの雪を使用し、初めての“体感型大雪像”として注目を集めています。像の左下部分に、戦闘機Xウイングが登場し、実際に乗船可能です。
その他にも、「HBC フィンランド広場」では大雪像「ヘルシンキ大聖堂」が登場しました。圧倒的な存在感のある大雪像です。夜になるとライトアップされ、美しい姿が夜の大通公園に浮かび上がります。
雪まつり会場では北海道のグルメが楽しめる屋台も見どころの一つで、多くの人が白い息を吐きながらも、あったかい料理で身体をあたため北国のイベントを満喫していました。
特に観光客を熱狂させたのが、雪まつり期間8日間のためだけに、大通会場3丁目「HTB PARK AIR広場」に作られた巨大ジャンプ台です。
高さ24メートル、全長60メートル、最大斜度39度のジャンプ台で、日本トップレベルのスノーボード・フリースタイルスキーが繰り広げられ、大変な盛り上がりでした。
札幌の中心部、ビルに囲まれたこの環境でスキーやスノボを観戦するというのは、ここでしかない貴重な機会ではないでしょうか。ビルが間近に迫るロケーション、そして下には鈴なりの観客という通常とは全く異なる状況にもかかわらず、堂々としたパフォーマンスを見せてくれる選手たちに脱帽です。
年々技術が進化し、技の難易度は素人目に見ても、どんどんと複雑になっていくのがよくわかります。重力を無視した、夜空に舞うボーダーやスキーヤーの姿は、寒空を忘れるような美しさです。13歳の少女も、気持ちよさそうに高く舞い上がります。
シングルでは個性あふれる技を披露し、ペアやトリプルでは息のあったジャンプに感嘆の声が上がります。次々と繰り広げられるパフォーマンスに、観客のテンションも上がり、会場は興奮のるつぼになりました。
北海道の長い冬をただ室内で通り過ぎるのを待つのではなく、外で思い切り楽しむ爽快感!春が待ち遠しいのではなく、来年の冬が待ち遠しい!?
M.Sawaguchi
ライター、輸出ビジネスアドバイザーとして活動中。
早稲田大学文学部にて演劇を専攻し、能、狂言、歌舞伎、浄瑠璃といった日本演劇、西洋演劇、映画について学ぶ。一方で、海外への興味も深く、渡航歴は30か国以上。様々な価値観に触れるうち、逆に興味の対象が日本へと広がる。現在は、外資系企業での国際ビジネス経験を元に、実際に各地に足を運び、日本各地発の魅力ある人、活動、ものについて、その魅力を伝えることで世界が結ばれていくことを願い、心を込めて発信中。