闇夜に響く唸り声!ユネスコ無形文化遺産登録で盛り上がる「なまはげ柴灯まつり」

「泣く子はいねがぁ~!悪い子はいねがぁ~!」でおなじみ、秋田県男鹿(おが)半島に伝わる「なまはげ」。怒鳴りながら民家に現れ、泣き叫ぶ子供の様子を、テレビなどで一度は見たことがあるのではないでしょうか?

「なまはげ行事」は、秋田県男鹿地域で古くから伝わる民俗行事で、大晦日に男鹿市内の約80の集落で行われているそうです。大晦日の晩、鬼の面をつけ、ケデなどと呼ばれるワラのミノをまとった来訪神「なまはげ」に扮した青年たちがやってきます。民家を巡り、悪事に訓戒を与え、災禍を祓い、祝福を与えて去っていきます。2018年には、ユネスコ無形文化遺産に登録されて話題となりました。

「なまはげ柴灯(せど)まつり」とは、12月31日に行われているなまはげ行事と1月3日に行われている柴灯まつりを統合させ、冬の代表的な冬まつりとして定着しました。昭和39年が始まりと言われており、今回で56回目の開催となります。

真山神社へ

なまはげゆかりの神社「真山神社」で行われるなまはげの祭典

2019年は、2月8日(金)~10日(日)に、「なまはげ柴灯(せど)まつり」が開催されました。まつりの会場、秋田県男鹿市にある、なまはげゆかりの神社「真山神社」へ向かいます。仁王門から拝殿まで、70段ほどの石段を登ると雪のかぶった杉木立に囲まれた境内があらわれました。

樹齢1,000年余りといわれる榧(かや)の巨木

真山は古くから山岳信仰の霊場として栄えたそうで、社殿前庭には樹齢1,000年余りといわれる榧(かや)の巨木(県指定天然記念物)が枝を広げ、古びた社殿とともに歴史を感じさせる荘厳さを醸し出していました。

真山神社の紫灯火

会場の中心には紫灯火がたかれ、会場はいっそう幽玄の世界へと誘われます。

神妙な面持ちでお面を授かるのを待つ若者たち

人が神になる瞬間

「なまはげ入魂」の儀式が祭道で行われました。神妙な面持ちでお面を授かるのを待つ若者たちがいました。若者たちが参道の石段から降りてきて、面を授かり身につけます。人が神になる瞬間です。唸り声を上げ身体をゆらし、若者たちはなまはげとなり、山の奥へ帰っていきました。

神楽殿での男鹿市内各地に大晦日に行われる「なまはげ」の再現

神楽殿では、男鹿市内各地で実際に大晦日に行われる「なまはげ」の再現が行われました。そのなまはげ問答のやりとりのなかには、地域の人たちがお互いを思いやる気持ちがにじみ出ていました。それはそれは、心温まるものでもありました。

なまはげ2体による勇壮な踊り

その後、なまはげ2体による勇壮な踊りが、燃え盛る紫灯火の前で披露されました。秋田出身の現代舞踏家と作曲家により、昭和36年にできた踊りだそうです。

郷土芸能「なまはげ太鼓」

続いて、神楽殿では、男鹿のなまはげと和太鼓を組み合わせた郷土芸能「なまはげ太鼓」が披露されました。「家内安全」「五穀豊穣」を願って迫力ある和太鼓演奏が披露されます。演奏する曲目は、男鹿半島の風土や伝説をモチーフにしたオリジナル曲で、独自の世界観を作り上げています。そのシンプルにして奥の深い響きは、母なる心音のように優しく、猛り狂う雷鳴のように激しく、血を沸かせ心を奮わせます。

郷土芸能「なまはげ太鼓」

「うお~」「うお~」遠くからきこえる唸り声。どこからやってくるのか、会場の全員が、唸り声に耳をかたむけ、なまはげの登場を待ちます。

なまはげ集結!「神鬼」なまはげから可愛らしいなまはげまで次々登場

闇の中を山の上のほうを歩いていくなまはげ

たいまつをかざしたなまはげが、闇の中を山の上のほうを歩いているのが見えます。その姿はこの世のものとは思えないほど荘厳かつ幻想的で、見るものを魅了します。雪に覆われた真山から、なまはげたちがゆっくりと降りてきました。

おりてくるなまはげ

会場は、静寂に包まれ、紫灯火のパチパチとした音が、雪降る真山神社に響きます。下山し、観客のもとに降り立ったなまはげが、境内を練り歩きます。まさに「なまはげ柴灯まつり」のハイライトです。

鬼気迫るなまはげ

その鬼の面は表情を持ち、近寄りがたい雰囲気と迫力に圧倒されました。鬼気迫るとはまさにこのことでしょうか。

神に献ずる護摩餅を受け取るため下山するなまはげは、神の使者が化身した「神鬼」とされています。神鬼が去った後、地域各地の特色あるなまはげが次々に会場にあらわれました。

ユニークななまはげ

ユニークななまはげ

怖いものから、可愛らしいものまでユニークななまはげを一度に見ることができます。お面はひとつひとつが手作りで、地区ごとに伝承されているため、表情も全く異なります。なまはげ行事は、集落単位で伝承されてきたため、お面や装束、しきたりまで集落独自の習わしがあるのが特徴です。なまはげが、赤ん坊を抱え上げます。大泣きするのかと思えは、笑顔を見せる赤ん坊の姿。さすがに、本場男鹿の子は強いと思わず唸ってしまいました。最後に、紫灯火で焼いた餅が切り分けられ、来場者に振る舞われました。

まるで映画の中に紛れ込んだような非日常を経験し、この男鹿の勇壮な伝統行事に圧倒されました。あの忘れることのないなまはげの形相は、しばらく夢にでてくることになるでしょう。

N.Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・フォトグラファー。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。


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なまはげ柴灯(せど)まつり https://oganavi.com/sedo/
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