撮り鉄の「食」の思い出(42) クセになる!「黒石つゆ焼きそば」と「キ100」/ 2005~2015年


クセになる!「黒石つゆ焼きそば」と「キ100」/ 2005~2015年
青森県黒石市は、青森市の南で弘前市の東側にある人口3万人強の町。

そして、ここにある黒石駅に向けて走る鉄道は弘南鉄道(こうなんてつどう)弘南線です。

津軽平野の西側に敷かれた路線で、天気の良い日には岩木山を望むことができます。


[弘南鉄道弘南線の沿線からは岩木山を望むことができる(2005年撮影)]

この路線を走る電車は、もともと東急で使われていた通勤電車を2両編成に組み替えられています。

ちなみに、この車両が弘南鉄道にやってきたのは1988年のこと。

もしかしたら、通学などで乗られた方も多いのではないでしょうか?


[弘南鉄道弘南線の電車は元東急(2009年撮影)]

普段は田んぼの続く、広々とした風景の沿線ですが、ひとたび雪になると様子は一変します。

あたり一面真っ白になり、どんどんと雪が積もります。


[雪が降り始めると、あたりは真っ白に(2009年撮影)]

線路に雪が積もってくると、都会を走っていた電車だけでは線路の雪を払いきれなくなります。

そうなると出番になるのが、ラッセル車「キ100」です。


[ラッセル車「キ100」]

一見すると機関車のように見えますが、実は貨車の一種です。

ヘッドライトや運転席があるのですが、自分で走ることができず、ほかの車両に押してもらって走ります。

この「キ100」は、昭和初期ごろから主に国鉄で導入されました。

雪の多い地方を中心に配属されて、いちばん多いときには200両近くがありました。

その後、自走できるディーゼル機関車のラッセル車に圧されて数を減らし、平成元年(1989年)には国鉄、JRから廃止になっています。

私鉄に残った数両も路線の廃止などでなくなり、現在動いているのは、弘南鉄道の2両と津軽鉄道の1両。

合計3両だけです。


[SL時代の羽越本線坂町駅。キ100が3両並んでいるのが見える(1971年撮影)]

ここを走る「キ100」は、なんと1929年(昭和4年)製。

今年で90歳。

現役。

びっくりです。

さらにすごいのが、この「キ100」を押している機関車。

赤い色で凸型(でこがた)と呼ばれるスタイルの機関車は、なんと大正生まれ!

1923年にアメリカのメーカーで作られ、西武鉄道から1961年に移ってきました。


[大正生まれの電気機関車「ED333」も現役(2009年撮影)]

100年近く動いている電気機関車……。

単に「古いものを大事に使う」を超えて、なにか執念のようなものを感じます。

もちろん、雪が深くなるとラッセル開始。

先頭の左右にある羽を広げて線路の雪を跳ね飛ばします。


[雪を跳ね飛ばして走るラッセル車(2009年撮影)]

黒い「キ100」がヘッドライトを輝かせ、雪煙を上げて走ってくる姿。

雪原を裂く轟音と、力強い電気機関車のモータ音が響きます。

もう、クセになるのほどの迫力です。


[遠くから見ると絵本の1シーンのようでかわいい(2009年撮影)]

そして、鉄旅の楽しみが「ご当地」ならではの食べ物です!
さて、終点の黒石駅。

どの路線にも接続しない行き止まりの駅です。

この駅も、昔からよく見るタイプの懐かしいスタイル。

待合室も広くて、ストーブを囲んで椅子が並んでいるのが、北国らしい様子です。


[終点の黒石駅(2005年撮影)]


[黒石駅待合室、ストーブの周りに椅子がある(2009年撮影)]

黒石といえば、そう「黒石つゆ焼きそば」が思い浮かびます。

最初に聞いたときには、「しる? えっ……焼いてないじゃん」と思ったのですが、ちゃんと焼いています。
 
私が初めて入ったお店は、駅前にある〝すごう食堂“。

いい感じの駅前食堂で、「津軽百年食堂」の文字もすばらしい!

つい入ってみたくなる店構えです。


[駅前のすごう食堂(2011年撮影)]

最初は、カメラマン仲間数名で入りました。

このときのメンバーは保守派が多かったのか、カツ丼やらラーメンを頼んでいました。

私はちょっと悩んでから、「やっぱり、つゆ焼きそば!」と注文です。

出てきたのは黒いラーメン?(この時点で、前知識なし……)


[黒石つゆ焼きそばと初の対面(2009年撮影)]

野菜と肉と天かす、ネギが乗った平打ち麺です。

まずは、スープをいただきました。

ひと口目。

「あうっ……やってしまったかも……!?」

正直な感想で、温かいソースのスープは、かなりアバンギャルドな印象です。
 
それでも、温かさにつられて麺とスープでふた口目。

「んっ!? あれっ!?」

もちもちの平打ち麺が合うかも。

さらに食べ進めて、天かすのこってり感やにんにくの風味が感じられると……やられました。

食べ終わるころには、周りのメンバーに「うまいよ。これ!!」と、自慢げに言い始めている始末。

ちなみに、厨房で作っているところを見てみると、焼きそばを炒めて(焼いて)からスープを投入。

ちゃんと焼きそばでした。

 
この黒石つゆやきそば、クセになります。

今日は、どうしてもポテトチップスが食べたい!

そんな感じでしょうか?

黒石に撮影の用事がないときでも、青森県に居て時間があるときには、ふらっと向かってしまいます。

何年か黒石に通ううちに、ほかの店にも入ってみました。


[こちらは、中華のお店「一番」]

「一番」では、ほんの少しソースがあっさりめでスープの香りも強いです。

平たい皿で盛り上がっていて、揚げ玉のサクサク感が残っています。

これもまたおいしい!


[「一番」の黒石つゆやきそば(2012年撮影)]

黒石では、かなりたくさんの店がつゆやきそばを出しています。

定食屋だけでなく、中華料理店やとんかつ屋でも出しているので、まだまだ店巡りを楽しめそうです。

食べてみたいけど、なかなか黒石までは行けないという方に朗報。

東北新幹線の新青森駅のコンコースにも「黒石つゆやきそば」のお店「黒石や」があります。

こちらも平打ち麺でなかなかおいしい。


[新青森駅で食べられる黒石つゆやきそば(2015年撮影)]

東北への旅行の際には、ぜひ食べてみてください。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
 鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
 ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。


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