
東北屈指の戦国大名・最上義光公が、出羽57万石の大大名となり築き上げた名城「山形城」。明治維新で廃城となり、陸軍によって埋め立てられてしまいましたが、いま山形城跡では町を挙げての発掘調査・復元工事が行われています。
独特の奇抜なデザインと美しさが秀逸!国指定重要文化財「旧済生館本館」
大手(おおて)にあたる「本丸一文字門(ほんまるいちもんじもん)」の近く、霞城公園内に、山形市の郷土館となっている国指定重要文化財「旧済生館本館」があります。
明治11年9月に竣工し、県立病院として出発した後、明治21年に民営移管となり、更に37年には市営病院の本館として使用されました。オーストリア出身のアルブレヒト・フォン・ローレツを医学寮の教頭として招き、東北におけるドイツ医学のメッカとなりました。昭和41年12月5日に国の重要文化財に指定され、それに伴い霞城公園内に移築復元され、昭和46年に「山形市郷土館」として新たに出発しました。
一階・二階の一部は一般に無料公開され、医学関係資料と郷土資料なども見ることができました。
旧済生館本館は山形の洋風建造物の代表ですが、ただの「洋館」ではありません。擬洋風(ぎようふう)の病院建築物です。擬洋風建築とは、幕末から明治頃、「日本人の大工、宮大工や左官職人らが、西洋人の建築家が設計した建物を参考に、見様見真似で建てた西洋風の建築物」のことです。
そこには、日本人の好奇心と職人魂が込められています。地元山形の棟梁(とうりょう)に指揮された多数の職人たちの技と西洋建築との見事な融合、外観のデザインの奇抜さと美しさは、日本のどこにも見られない創造性豊かなものです。
「擬洋風建築の最高傑作」「明治建築の華、東の正横綱」とまで称される旧済生館本館は、冬の凛とした空気に映え、とても印象的な姿でした。
一階は変形の八角形と十四角形の組み合わせ、二階が十六角形、三階が八角形で、現代人も驚くような奇抜なデザインです。全体の高さは24メートルで、八階建てのビルに相当します。新時代の「洋風天守閣」であったともいえそうです。こうしたユニークさから、山形市民はもちろん、多くの観光客を魅了しているほか、建築や医学を志す若い人たちが一度は見てみたい建物として憧れの対象になっています。幸運なことに、明治時代の二度の大火や病院内の失火にも被害を免れました。これからも山形の大切な宝として愛され、守り続けられる歴史的建造物のひとつでしょう。
当時の状態に復元された旧県県庁舎と旧県議会議事堂は映画『るろうに剣心』のロケ地にも
山形県郷土館「文翔館」は、大正5年に建てられた旧山形県庁舎と旧県議会議事堂です。大正5年築のイギリス・ルネサンス様式を基調とした、レンガ造り石張りの旧山形県庁舎とレンガ造りの旧議事堂は、ともに国の重要文化財、近代化産業遺産です。
正面広場の西側の花壇の方角からながめる旧議事堂と旧県庁舎の佇(たたず)まいは、まるでヨーロッパの王宮広場のようであり、対照的な外観が互いの個性を引き立たせます。
旧山形県庁舎と旧県議会議事堂は、県庁の移転後しばらくは廃屋同様の状況でしたが、昭和59年に重要文化財に指定されたことを契機に、10年の歳月と45億円の費用を掛けて平成7年に創建当時に復元されたそうです。旧県庁舎の塔時計は、日本で現在稼動している内では、札幌の時計台に次いで2番目に古いものです。
館内は無料で公開され、旧山形県庁舎3階の知事室、貴賓室などは、家具やじゅうたんに至るまで当時の状態に復元されており、その時代の雰囲気を味わうことができました。
映画『るろうに剣心』(平成26年8月公開)では、内務省の建物として旧県知事室、そして中庭がロケ地に登場しています。
蒲鉾状の天井に16本の列柱をもつ旧県議会議事堂の議場ホールは豪華絢爛で、海外の宮殿の中のホールのような華やかさがありました。この議場ホールはコンサートや演劇公演などにも開放され、さまざまな地域イベントが行われています。また、「中庭」「ギャラリー」「会議室」の貸出もされており、コンサートや演劇公演、展覧会など、様々な文化活動の場として広く一般に開放され、多くの県民に親しまれています。
復元された建物で現代の学生たちの創作物が展示
訪れた1月は、山形大学の地域教育文化部の学生の方々の卒業・修了制作展が開催されていました。絵画・木彫・版画・アニメーション・インテリアを用いたインスタレーション・紙を用いた被服表現など様々な技法・材料を用いたバリエーション豊かな作品が展示されていました。
「塊が生み出す生命感のある彫刻の制作研究」という卒業研究題目で制作された作品「座頭鯨」や、
子キリンを原寸大で制作した作品「麒麟児」、
青い照明の中に、白い花がきれいに咲いた作品「Light- light」が、雰囲気ある室内とあいまって、魅力的な空間に演出されています。
当時の息遣いを感じる建物が復元、活用されて新たな命がともり、現代の人々と交差していく環境を創り出していく姿勢に、多くの感銘を受けました。
N.Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・カメラマン。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。