
街にクリスマスソングが流れる頃、全国各地で大規模なイルミネーションが夜の闇を彩ります。冬の懐かしい記憶とともに、人それぞれに、様々なクリスマスシーズンの光を思い浮かべるでしょう。私にとって、この季節になると思い出されるのが、学生時代を過ごした札幌のイルミネーションの煌めきです。
実は、日本で初めてイルミネーションを始めたのが札幌市です。「さっぽろホワイトイルミネーション」は1981年に始まり、今では約52万個の電飾が点灯され毎年数多くの人が訪れる冬の札幌を彩るイベントとして定着しました。三重の「なばなの里」や長崎の「ハウステンボス」、東京のよみうりランドなどの全国の人気イルミネーションスポットと比べると、電飾の数は少ないほうではありますが、「さっぽろホワイトイルミネーション」は、光と雪の組み合わせによる「光の芸術」が味わえます。寒さに震えながらも、その色鮮やかな光を見ていると、心だけではなく、不思議と体も温かくなっていくような幸福感を覚えるのは、雪国ならではの特権かもしれません。
札幌テレビ塔や大通り公園が光の洪水に!
テレビ塔のエレベーターで一気に90.38メートル上がり、展望台に到着すると、新日本三大夜景の札幌の街並みが広がります。大通り方面はイルミネーションを中心に光の洪水が展開され、遠くには白く輝く「大倉山ジャンプ台」ものぞめます。
札幌テレビ塔の真下には、赤く輝くハートがモチーフのクリスマスツリーが設置され、赤を基調としたグランドイルミネーションが雪上を染め上げ、「LOVE」が表現されていました。
大通り会場を歩くと、札幌テレビ塔もツリーのように輝き、ライラックの花をモチーフにしたイルミネーションと調和していました。花と季節の移ろいが、光と音の動きのある演出で表現されています。
ダイヤモンドをモチーフにした光の宮殿「ジュエリーパレス」と
神秘的な光を放つ噴水を使った「スパークファウンテン」がクリスマス気分を高めます。
大きな樹木が立ち並ぶ会場では、グリーンに輝く光の迷路があり、クリスマスのオーナメントの中に入り込んだような楽しさを演出しています。
ミュンヘンクリスマス市を通って温もりに満ちた札幌を楽しもう!
2丁目会場では、ミュンヘンクリスマス市が開催され、札幌の姉妹都市であるドイツ・ミュンヘンを訪れたような雰囲気に包まれていました。ソーセージやアイスバインなど本場ドイツの伝統料理、シュトーレン等の菓子、ホットワイン、ホットチョコレートやクリスマス雑貨の屋台が並びます。
また、JR札幌駅前からススキノまでの中央分離帯の立木にはLED電球が装飾され、光のリレーのような華やかな冬のメインストリートに変身します。
北海道に現存する中で最古の街路樹である、赤レンガ前のイチョウ並木は、変幻自在に色が表現できるLEDを用いたイルミネーションがされ、赤れんが庁舎(北海道庁旧本庁舎)をのぞむ札幌を象徴する景観を一層鮮やかに演出していました。サウンドアーティスト大黒淳一氏による音楽と光が、北海道の四季を表現しています。
暖房が入った、札幌の快適な地下空間を抜け出し、一歩地上に出てみてください。時には氷点下となる、あまりの寒さに体は凍えるかもしれません。しかし、そこには、心震える光に照らされ、温もりに満ちた札幌の“冬の姿”が待っています。
N.Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・カメラマン。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。