メンタル面から強くなったJ・ラームの勝利【舩越園子コラム】

バハマで開催された“タイガー・ウッズの大会”、「ヒーロー・ワールド・チャレンジ」は、その成績が世界ランキングの対象にはなるが、米ツアーの公式戦とはされておらず、優勝しても勝利数には加算されない。

リッキー・ファウラー(米国)のプロフィールに目をやれば、通算勝利数は「4勝」と記されているが、彼は昨年、今大会を制してキャリア5度目の勝利を挙げ、自信を膨らませて2018年を迎えた。その流れが「マスターズ」での優勝争いへとつながっていった。

ファウラーには「過大評価」という文字がずっと付いて回っている。「絶大なる人気のわりには優勝が少ない」「勝利数が少ないわりには人気が高い」と言われ、「実力を過度に高く評価されている」と揶揄されて久しい。

「メジャーで勝てない」という指摘も多く、「メジャー・タイトル無きグッドプレーヤー」という屈辱的な称号も、いつしかファウラーのためのものと言われるようになった。

だが、ファウラーはそうした声を実に上手くかわしている。惑わされないように意図的にかわしているのか、それとも自ずとそうできるのかは、ファウラー本人にしかわからないが、いずれにしてもファウラーの考え方にはとても共感させられる。

「『あんまり勝てない』『ちっともメジャーに勝てない』と言われ、僕自身、もっと勝ちたい、メジャーに勝ちたいと思うけど、勝率30%のタイガー・ウッズのようなことは、なかなか実現できるものじゃない。それより僕は『グラスには水が半分もある』と思いたい。そうやってモチベーションを維持して前進していきたい。ネガティブな面に目をやってしまったら、道のりはどんどん長くなってしまうからね」

「半分しかない」と嘆く代わりに「半分もある」と喜ぶ。そんなふうに前向きな選手は間違いなく強い。今年、今大会を制したスペインのジョン・ラームも、その一人だ。

2014年と15年にスパニッシュ・アマチュアを2連覇、世界ジュニアも制覇して「世界ナンバー1アマチュア」と呼ばれたラームだが、アリゾナ州立大学に入学したころは「英語がほとんど話せなかった」と婚約者のケリー嬢が教えてくれた。

同大学の陸上部で投げやりの選手だったケリー嬢は、ラームの英語力の不足は国際的舞台での競争力の不足になると考え、デートのたびに英語を教えたという。さらにケリー嬢は太りすぎだったラームの食生活を変えさせ、ラームも素直にダイエットに取り組んで15キロ以上の減量に成功。

「世界で戦うため、強くなるためなら、何だってやる」

そんなラームの前向きで柔軟な姿勢が米ツアーデビュー早々の勝利につながったのだと思う。ルーキーイヤーの2017年に「ファーマーズ・インシュランス・オープン」を制し、2018年は「キャリア・ビルダー・チャレンジ」で通算2勝目を挙げた。欧州ツアーでも、すでに3勝。

今大会の最終日もメンタル面を整えたことが、ノーボギーの7アンダー「65」という好プレーにつながった。

「どんなプレーをすべきかを心の中で決めてから、迷うことなく球を打った。ショットは完璧だった。パットもすごく良かった。米ツアーで、この2年で3勝はとてもうれしい」

今大会の勝利を含めた「3勝」は、米ツアーの公式記録上は「2勝」のままになる。それは、ファウラーの勝利数が「5勝」ではなく「4勝」のままであることと同じ事情だが、前年のファウラー同様、ラームも「僕は勝った」という事実と手ごたえを糧に2019年を迎えようとしている。

2018年シーズン最終戦で復活優勝したウッズは、大会ホストを務めた今大会では最下位から2番目の17位と振るわなかったが、やはりウッズも自身が得た事実と手ごたえを生かして前進している。

「昨季終盤、僕がプレーオフ4試合に全部出られるなんて誰も想像していなかった」
 
想像を上回り、4試合すべてで戦えたことに喜びを感じたからこそ、ウッズは勝利を挙げることができた。その事実と手ごたえ、何より自信が必ずや来季のウッズの武器になる。

「半分しかない」と嘆く代わりに「半分もある」と喜ぶ。その効果が絶大であることを今大会でも教えられた気がしている。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)


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