
古刹(こさつ)ひしめく秋の博多が、幽玄の光に包まれる「博多旧市街ライトアップウォーク 千年煌夜」。その美しさから既に博多の秋の風物詩になりつつあります。舞台となるのは、博多の総鎮守「櫛田神社(くしだじんじゃ)」や「承天寺(じょうてんじ)」、「東長寺(とうちょうじ)」など十数か所。博多の由緒ある寺社ばかりで、和×ライトアップで幻想的な秋の夜を演出し、「日本夜景遺産」の「ライトアップ夜景遺産部門」に認定されました。全体の照明コンセプトは、今年で777年を迎える博多織に敬意を評し、「博多織」となりました。
博多の寺町エリアに導くウェルカムゲート「博多千年門」では、欄干に彫られた博多織の献上柄が美しくライトアップされ、昼間は見ることができない、その艶やかな表情に圧倒されます。
「承天寺」は1242年に創建され、うどん・そば発祥の地ともされており、ライトアップウォーク中は「博多中世うどん」などの夜市が人気で、寒い秋の風で冷えた体を温めます。また、境内には特別に「東流の舁(か)き山笠」がライトアップ展示されています。
「博多旧市街ライトアップウォーク」の一番人気といっても過言ではないのが、承天寺の「洗濤庭(せんとうてい)」です。
普段は一般公開されていないお庭「洗濤庭」が、この期間は特別に開放されます。鮮やかな石庭の波紋が様々な色のライトで照らされ、暗闇に浮かび上がり、その色合いは緩やかに変化していきます。ライトアップされた紅葉との対比も趣があります。
「妙楽寺」は1316年に創建された博多商人とも縁の深いお寺で、戦国時代の争乱により消失したのち、1600年頃に黒田長政により再興したお寺です。塀に照らされる5色のライト、地面や壁一面に広がる博多織模様が印象に残りました。
「円覚寺」は、福岡藩士立花実山(たちばなじつざん)直筆の「南方録」が伝承されており、南方流の茶と禅の道場です。ライトアップされた鐘楼、博多織の光模様と松のコラボレーション、引き込まれそうな美しさの中庭と非現実の世界に引き込まれます。
「本岳寺」は、禅宗の寺院でしたが、1496年に京都の法華宗「日因(にちいん)上人」と当時の住持職「西昌」が寺を賭けて碁を囲み、その結果、日因上人が勝利し、寺を譲り受け、日蓮宗に改宗した珍しい寺院です。本堂は、豪華絢爛な装飾がされ、貴重な「釈迦誕生図」、「釈迦涅槃図」が見物可能となっており、ご住職により詳しく説明をいただくこともできました。
「東長寺」は806年に建てられたお寺で、弘法大師創建のお寺としては日本最古と伝えられ、平安時代に作られた菩薩像や日本最大級の木造座像「福岡大仏」などが鎮座しています。絶妙な色合いで照らし出される本殿と燃えるような朱色に浮かぶ五重塔は、なんとも華やかで思わず息を呑むほどです。
その他、「海元寺」では地獄と極楽を表した「閻魔堂」と「観音堂」のライトアップ、
「善導寺(ぜんどうじ)」では草月流いけばなの展示、
人魚伝説のある「龍宮寺」ではアーティストが壁面に描くライブペインティングなど、博多の夜が様々な色に彩られました。
博多っ子からは「お櫛田さん」という愛称で親しまれている、博多の総鎮守である「櫛田神社」も、美しくライトアップされ、敷地内には、飲食をしながら音楽を楽しめる「にぎわい舞台」も設けられました。また、本イベントに合わせて、「博多旧市街まるごとミュージアム」が開催され、近くの公園では、海上運送用コンテナを用いた大掛かりな映像インスタレーションが展示されていました。
お寺の本堂から流れてくるお香のいい匂いと秋の澄んだ夜風で感覚が研ぎ澄まされるような気持ちになる“闇”を楽しむそぞろ歩き、博多の“粋”な夜のひとときとなりました。
N. Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・カメラマン。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。