二つの塔…『芝公園の「こども平和塔」を見下ろす「東京タワー」』 田澤鐐二×内藤多仲

東京都港区芝公園。芝公園は日本で最も古い公園の一つです。1873年(明治6年)太政官布達によって、上野、浅草、深川、飛鳥山と共に芝の5カ所が、日本で最初の公園として指定されました。これが全国の公園造成の先駆けとなります。1902年芝公園に運動器具が備えられ、東京の公園における運動施設の始まりという歴史も持っています。そんな芝公園の中に「こども平和塔」という塔が建っています。「こども平和塔」は、1954年(昭和29年)田澤鐐二の発願により建設された塔です。
芝公園の中にある「こども平和塔」

(写:芝公園HPより)

田澤鐐二(たざわ・りょうじ)は愛知県出身。大正時代に結核療養所初代所長や日本結核病学会会長などを務めた内科学者です。戦前戦後に猛威を振るった「結核」に対して、1947年に人々への平和と愛と健康を願って財団法人平和協会を設立します。1949年には財団法人平和協会駒沢病院を開設し院長に就任しました。

また息子3人を太平洋戦争で失ったことで、世界平和の理念を子供たちの心に固く刻むことを目的とした「こども平和塔」を建てたいと思いました。自分の私財で建てるのは簡単でしたが、できれば子どもたちと建てたい。こどもの手による「こども平和塔」建立資金運動が全国の小・中学校の児童会・生徒会に呼びかけられました。そして7年間かけて、全国1,051の学校において、児童・生徒が古新聞等の廃品回収、お小遣いを節約して塔を建てることに応え、約100万円のお金が集まりました(現在では3500万円~5000万円くらい)。更に共鳴した多くの会社や各種協会、社会事業団体、個人からの寄付、総額500万円の資金が集まりました。建てられた「こども平和塔」上部には、平和の象徴であるハトが三羽描かれています。毎年8月15日に清掃とこども平和まつりが開催されています。

「こども平和塔」が建てられた4年後の1958年(昭和33年)、その目と鼻の先に芝公園を見下ろすように「東京タワー」が完成しました。東京タワーを設計したのは内藤多仲です。

「耐震構造の父」や「塔博士」と呼ばれた内藤多仲

内藤多仲(ないとう・たちゅう)は山梨県中巨摩郡出身。東京帝国大学で耐震構造を研究し、1913年(大正2年)より早稲田大学教授となり建築構造学者として活躍します。内藤が携わった耐震壁付き鉄骨鉄筋コンクリート造の日本興業銀行本店や歌舞伎座が関東大震災でほとんど被害を受けず、理論の有効性が確かめられたことにより、「耐震構造の父」とも称されました。

墓石の左側に建つ内藤多仲さんの銅像と顕彰記

(写:墓石の左側に建つ銅像と顕彰記)

戦後は名古屋テレビ塔、2代目通天閣、別府タワー、さっぽろテレビ塔、博多ポートタワーなど多数の鉄骨構造の電波塔や観光塔の設計を手掛け、「塔博士」と呼ばれます。その代表作が「東京タワー」(正式名称は日本電波塔)です。塔の規模や大きさは違いますが、両者の心が宿る二つの塔が芝公園には建っています。

田澤鐐二 埋葬場所: 2区 1種 11側
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/T/tazawa_ryo.html

内藤多仲 埋葬場所: 13区 1種 6側
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/N/naitou_t.html

【筆者プロフィール】
小村大樹(おむら・だいじゅ)
掃苔家・多磨霊園著名人研究家
1976年生まれ。1997年、大学生の時に多磨霊園の横にある石材屋でバイトをしたことをきっかけに多磨霊園に眠る著名人の散策を始める。1998年、当時インターネットが出始めた頃より「歴史が眠る多磨霊園」のホームページを制作。2018年開設20周年を迎える。
足で一基一基お墓を調査し、毎週1,2名ずつ更新をすることを20年間休まず実施(現在も継続中)。お墓をきっかけに眠っている著名人の生き様や時代背景の歴史を学ぶことをコンセプトにしており、掲載している人物は3000名を超える。
サイトを通じて多くの著名人のご遺族とも親交。歴史学者や郷土史家、出版社らの協力も惜しまず提供。一橋大学名誉教授の加藤哲郎『飽食した悪魔の戦後 731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)では論文として考察される。『有名人の墓巡礼』(扶桑社ムック)では一部執筆を担当。中学社会科・高校地理歴史の免許を取得し、通信制高校で教壇にも立つ。
『歴史を学ぶのは、過去の事実を知ることだけではない。歴史を学ぶのは、過去の事実について、過去の人がどう考えていたかを学ぶことだ』『私が著名人だと思った人物は全て著名人である』がモットー。


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◆歴史が眠る多磨霊園 http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/
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