
夜明け前の蒼暗い夜空の下、多くの人が寒さに耐えながら、空を眺め、その時を待ちます。風が止み、日が昇り始めるころ、一斉に大空がカラフルに染まります。
秋空を色とりどり様々なバルーンが埋め尽くす景色に圧倒
毎年11月の初旬に開催される世界規模の熱気球の競技大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」です。佐賀県佐賀市で、2018年は10/31(水)~11/4(日)にわたって開催されました。
毎年80万人を超える人出で賑わう「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」は、今やアジア最大級の規模を誇り、会場である嘉瀬川を起点に飛び立ち、佐賀平野上空で技を競います。日本だけでなく海外からの参加も多く、さまざまなクラスに分かれて、100機を超えるバルーンが空に浮かぶさまには圧倒されます。この時期だけ、会場の敷地内を通るJR長崎本線に臨時駅「バルーンさが駅」が登場します。
熱気球は、れっきとしたスカイスポーツであり、どれだけ正確に飛んでいけるかを競います。針路をコントロールする装置はありません。飛んでいく方向を決めるには、パイロットが見極めた風に乗るほかはなく、バーナーを操作し、温められた空気の力で上下するのです。早朝と午後(7:00と15:00)に競技が行われ、観客が一番期待しているのが、「一斉離陸」です。競技直前に、催行可能かどうかの決定がされますが、空が晴れていても上空の風次第で飛べないこともあり、今年も午後の競技は10/31~11/3と4日連続で、中止になりました。
離陸が行われるローンチサイトからは、目の前で競技の準備が行われ、バルーンが立ち上がる様子から離陸の瞬間までをじっくり見ることができます。
早朝の観覧ならではの特典として、まばゆい朝日が佐賀平野を包む様子が見られました。その朝日を浴びたバルーンの一斉離陸は本当に神々しく、見る者を圧倒します。
爽やかな秋空に色とりどりのバルーンが舞い、遠くに飛び立つバルーンは、徐々に霞んで行くのですが、それがまるで絵本の世界の様な情景を創り出します。
ローンチサイトの対岸では、逆光となるものの、バルーンが嘉瀬川へ映り込み美しい画を作り出します。川面にバルーンが映りこむ綺麗なリフレクションは、その夢のような壮大な世界をより魅力的に演出します。
熱気球には、企業ロゴが入ったものや立体的なキャラクターなどユニークなタイプと、バリエーションに富んでいることも特徴で、多くの世代が楽しめるイベントになっています。
バイクショーや夜間の生演奏とバルーンのセッションなど楽しみが満載
佐賀インターナショナルバルーンフェスタの楽しみは、ステージイベント、先が見えないほど続く屋台や地元特産品が販売されているバルーンモールなど、飽きることはありません。
ホンダ所属のプロライダーが、ローンチサイト前で「ホンダトライアルバイクショー」を開き、軽快なトークと迫力あるテクニックで観客の心をわしづかみにしました。
前輪を浮かせて走る「ウイリー」や後輪を持ち上げる「ジャックナイフ」など多彩な技を披露し、トークで笑いを誘いながら、観客の声援に応えていました。中でもバイクを垂直に傾ける「ジャイアントウイリー」や、横になった人の上を飛び越えるパフォーマンスには、ひときわ大きな歓声が沸きました。
会期中の最後の2日間、夜間には「ラ・モンゴルフィエ・ノクチューン(夜間係留)」と呼ばれる生演奏とバーナーに灯され発光する熱気球との共演がありました。係留したバルーンはバーナーの炎でライトアップされ、暗闇の中で幻想的な輝きを放ち、昼間とは全く違う表情を見せます。 観客席近くの特設ステージで演奏されるバンドの生演奏に合わせ、各バルーンがリズミカルに炎を上げ、音楽の途中で「バーナーズ・オン」の合図に合わせ、全てのバルーンが光を全開に放ちます。河川敷に上がる花火と共に、会場はクライマックスを迎えました。
「唐津くんち」と同時期に行われた、世界的なイベント「佐賀バルーンフェスタ」。秋の佐賀が、熱く、華やかに盛り上がりました。
M.Sawaguchi
ライター、輸出ビジネスアドバイザーとして活動中。
早稲田大学文学部にて演劇を専攻し、能、狂言、歌舞伎、浄瑠璃といった日本演劇、西洋演劇、映画について学ぶ。一方で、海外への興味も深く、渡航歴は30か国以上。様々な価値観に触れるうち、逆に興味の対象が日本へと広がる。現在は、外資系企業での国際ビジネス経験を元に、実際に各地に足を運び、日本各地発の魅力ある人、活動、ものについて、その魅力を伝えることで世界が結ばれていくことを願い、心を込めて発信中。