海の上に浮かんでいるよう…世界唯一の海上能舞台「嚴島神社」

世界遺産に登録された「原爆ドーム」

世界遺産に登録された「原爆ドーム」

台風が近づき、雨に打たれている広島の街は、人もまばらで、原爆ドームの周りも色を失くしていました。広島県廿日市市にある世界遺産「嚴島神社」で行われる、「野村万作さん、野村萬斎さんによる平清盛公生誕900年記念 嚴島神社奉納『宮島狂言』」取材の前に、もう一つの広島の世界遺産「原爆ドーム」を訪れました。

世界遺産に登録された「原爆ドーム」

1945年8月6日午前8時15分、人類史上最初の原子爆弾が炸裂したのは、広島県産業奨励館から南東約160メートル、高度約600メートルのところです。爆風の圧力は1平方メートルあたり35トン、風速は440メートルという凄まじい爆風と熱線、そして放射能の恐怖がこの地を襲い周辺の建物がすべて倒壊しました。その中で、爆風がほとんど上から垂直に働き、奇跡的に倒壊を免れたのがこの産業奨励館で、頂上の円蓋(えんがい)、鉄骨の形から、いつしか市民から原爆ドームと呼ばれるようになりました。被爆当時の惨状を残す姿がノーモア・ヒロシマの象徴として、1996年12月に世界遺産に登録され、世界がその保存に力を入れています。至近距離で鉄骨部がむきだしになったドームや説明のボードを食い入るように見ているのは日本人だけではなく、平和を願う様々な国籍の人々です。

別称「千羽鶴の塔」とも呼ばれる「原爆の子の像」

別称「千羽鶴の塔」とも呼ばれ、原爆で亡くなった子どもたちの霊を慰める「原爆の子の像」には、日本国内をはじめ世界各国から折り鶴が捧げられ、その数は年間約1千万羽、重さにして約10トンにものぼるそうです。

別称「千羽鶴の塔」とも呼ばれる「原爆の子の像」

台風が近づいているこの日も、オーストラリアから来た学生達が、早朝から「原爆の子の像」を訪れ、持参した千羽鶴を捧げていました。

世界でも珍しい海上に立つ稀有な社殿、世界遺産「嚴島神社」

世界でも珍しい海上に立つ稀有な社殿、世界遺産「嚴島神社」

平和公園の川辺から、高速船に乗り、嚴島神社に向かいます。雨に濡れた高速船の窓から、原爆ドームが浮かびます。高速船が宮島の桟橋に到着し、海上に浮かぶ大鳥居を眺め、豊国神社として豊臣秀吉を祀っている千畳閣と五重塔に立ち寄りました。

豊国神社として豊臣秀吉を祀っている千畳閣と五重塔

豊国神社として豊臣秀吉を祀っている千畳閣と五重塔

千畳閣は、豊臣秀吉が建設を命じ、秀吉の死後は、未完のままで現在に至ります。眼下に嚴島神社を臨み、神社側の真ん中の部分が開口されていて、ここに階段を作り、嚴島神社と繋ごうとしていたとも、言われています。

龍髯(りゅうぜん)の松

千畳閣から五重塔側へ出て桟橋方面に下って行くと、通路脇に”龍髯(りゅうぜん)の松”と呼ばれる樹齢二百年以上を誇る黒松の枝が広がっていました。

世界でも珍しい海上に立つ稀有な社殿「嚴島神社」

世界でも珍しい海上に立つ稀有な社殿、潮の満ち引きによってもその表情を変える神秘的で荘厳な平安寝殿造りの嚴島神社は、原爆ドームと同じく1996年に世界文化遺産に正式に登録されました。嚴島神社は1168年に、当時の日本の事実上の支配者であった平氏の棟梁「平清盛」の造営によって現在みられる美しい社殿群の基本が形成されました。この社殿群は海上に立地し、背景の「弥山(みせん)」と一体となった唯一無二の建造物といえます。仙台の松島、京都の天橋立と並び、日本三景の一つとなっています。

「嚴島神社」の朱色の回廊

宮島は、昔から島自体が「神」として信仰されていました。木を切ったり土を削ったりすることで宮島の地を傷つけてはならないと、社殿や鳥居は海に建てられたと考えられています。自然との共存が見事に実現され、創建以降の度重なる再建、及び修造にもかかわらず、平安様式を留めている数少ない貴重な建造物です。朱色の回廊がとても印象的で、シンボルである大鳥居は、見る角度によって味わい深く、改めて嚴島神社の中からみるのもまた情緒あふれる光景です。

狂言が行われる「嚴島神社」の能舞台

今宵狂言が行われる能舞台だけ白木で造られているのは、あまり華美にしてはいけない江戸の時代背景が影響しているのかもしれません。潮が満ちてくると舞台が海の上に浮かんでいるような、自然の景観の中に生きる舞台です。日本の芸事の力強い魂さえ感じることができます。

狂言が行われる「嚴島神社」の能舞台

“人間も自森羅万象の中の一つ”、“人間も自然と共生する存在”と語る野村萬斎さんが、狂言を行う場として、まさに絶好の舞台のように思われます。

狂言が行われる「嚴島神社」の能舞台

萬斎さんは、昨年世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演として、「平家物語」を題材にとり、日本の演劇史上に確たる叙事詩劇として燦然と輝く、木下順二の傑作戯曲『子午線の祀り』の新演出をされ、平清盛の四男平智盛を演じられました。平清盛ゆかりの嚴島神社にて、どのように、歴史が積み重なった“気”を支配し、古典と現代を結び、心情を表現されるのか。雨に打たれた能舞台が、現代を生きる狂言師、野村萬斎さんの登場を静かに待ちます。

N. Shimazaki
Webメディアのプランナー・ライター・カメラマン。国際ビジネスコンサルタント。
北海道大学卒業後、ワールドネットワークを持ったドイツ系企業に所属し、システム、マーケティング、サプライチェーン、イベント等のアジアのリージョナルヘッドとして、多国籍のメンバーとともに世界各地で数多くのプロジェクトを遂行。世界の文化に数多く触れているうちに、改めて「外からみた日本」の魅力を再認識。現在、日本の手仕事、芸能等の文化、自然、地方の独創的な活動を直接取材し、全国、世界へと発信している。

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