
何と札幌ドーム約32個分の広さ「真駒内滝野霊園」
札幌市中心部から車を走らせること約30分、道道341号真駒内御料札幌線沿いに、それは確かにありました。巨大な大仏の頭だけが見え、ずらっと一列に並ぶ多数のモアイ像。その独特な世界観は、通りがかる市民や観光客らを驚かせると同時に歓びを与えます。
そこは、1981(昭和56)年に開園し、総面積は約54万坪、何と札幌ドーム約32個分という広さの真駒内滝野霊園です。敷地内には4万基以上の墓石が建っており、最終的には7万基を予定という、北海道最大級の規模を誇る「公園霊園」です。公園管理事務所の岩渕事業部長は、「この霊園は、お墓ばかりの暗い場所ではないんです。子供たちも来たくなるような明るい気持ちになれる場所にしたいと考えています」と語られています。確かに、「公園」と冠がつくだけあって、全体の6割が緑地です。霊園内にはあちらこちらに、巨大な建造物と共に、リラックスして過ごせるベンチや広場が散在していて、とても明るい雰囲気がありました。
モアイも、元々は先祖を祀る墓だった事から、これらの建造物はこの霊園の考え方である宗教・宗旨・国籍一切問わないという特色を体現したそうです。
ラベンダー畑にぽっかりと浮かぶ「頭大仏」
大仏の頭が一面のラベンダー畑にぽっかりと浮かぶその姿が何とも非現実的で浄土感漂う「頭大仏」。 2016年7月17日に一般公開されました。
このエリアは、世界的な建築家である安藤忠雄さんの設計で、「精神性のある場所」として、ランドスケープ整備全てがラベンダーの丘に抱かれるような形状の設計となっています。
大仏は原石4,000tより選別・加工し57魂より構造され、高さ13.5m総重量1,500t。 鎌倉大仏と同じ大きさです。アプローチ(参道)が約60メートルあり、とても長く作られています。参道を過ぎるとそこには、16.2メートル×61.2メートルの「水庭」があります。「水庭」は、青い空と白い雲の天の世界を写し出していました。
その奥には長さ約40メートルのトンネル通路があり、そこを抜けると大仏に会える事ができます。真下に来てやっと全体を見上げる事ができる大仏は、頭の上にぽっかりと空く穴から見える光と青空を背負い、神々しくもあり美しくもあります。
遠くに、大仏を眺めるように立っているラベンダー越のモアイ像も見えます。
ここはどこだろう?と不思議な感覚に陥ります。
大仏が囲まれていく過程、小さなラベンダーの花の株から、人の手によって一つ一つ植栽されていく様子が、敷地内の円形の壁に写真とともに展示されていました。どれほどの苦労があったのだろうと、その努力と英知の結晶にただただ感心してしまいます。
安藤忠雄さんが、この頭大仏に込めた言葉があります。
“北海道の自然は広大である。
その美しさの中に日本人が忘れてきた豊かな感性を宿している。
感動は大きな力になる。
頭大仏は外から見えない。冬は、頭に白い雪が積もる。
見えないことによって想像力を喚起する。“
建築家 安藤忠雄
春は新緑、夏はラベンダーの紫、そして、冬は真っ白な雪に包まれる丘は、一年を通じて自然と共生する姿を見る事ができるしょう。海外からも、多くの観光客が、札幌の新しい名所を訪れています。 ”これまで例のない新しい世界をつくることができた“という安藤忠雄さんの傑作を是非体験してみてください。
撮影・文 / Shimazaki