どん底を味わった詩人と才能あふれる詩人たちの師弟愛 北原白秋×興田準一 

あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめで おむかい うれしいな
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

この童謡は北原白秋の『あめふり』です。童謡を聞くと子どもの頃を思い出し懐かしい気持ちになりますね。

 北原白秋(きたはら・はくしゅう)は熊本県で生まれましたが育った本籍地は福岡県柳川です。県立伝習館中学の頃より詩歌に熱中し、上京して早稲田大学に入り懸賞で一等に入選するなど新進詩人として注目されるようになります。「明星」に詩・短歌を発表して才能を示し、1908年(明治41年)『謀叛』を発表して世評高くなりました。翌年「スバル」を創刊。耽美派・新浪漫派と呼ばれる文学グループに属して活躍しました。

 生涯の全著作は200冊にのぼり、現代の我々にも馴染みある詩をたくさん排出している偉人です。しかし、プライベートは前途多難。実家の没落、借金苦に加え、任期絶頂期に起こった隣家の人妻の俊子の夫から姦通罪で告訴され逮捕されるスキャンダルも起きました。これは別居中の夫による陰謀で無罪免訴となりましたが、白秋は俊子の離婚が成立した後に最初の妻として迎えます。しかし長続きせず、再婚するもまた離婚、そしてスランプにも陥りどん底を味わいます。

 1921年(大正10年)に菊子と再々婚して、子供にも恵まれ、詩作活動も蘇り、生活も少しずつ安定をしだしてきました。そんな折、白秋をうならせる新人詩人に出会います。同郷で小学校教師をしていた興田準一(よだ・じゅんいち)です。

興田準一さんのお墓

 興田準一は尋常小学校准訓導の検定試験に合格し、18歳から4年間、現在の福岡県筑後市で教員をしながら、鈴木三重吉主宰の雑誌「赤い鳥」に詩を投稿していました。その時の選者が白秋です。度々採用され雑誌に掲載されていました。白秋は興田の才能を見出し、上京を促します。1927年4月9日(昭和2年)スタンプの白秋が興田に送ったハガキにはこのように記されていました。

 「今度の家も手狭で、君の勉強部屋や寝室に当てるべきものがないため、窮屈だろうと思うが、とにかく上京してみたまへ。・・・入学のつもりで、かたがた私の助手なり書生なりの覚悟でないと失望するだろう。」

 興田は喜び上京を決意します。白秋は興田を自宅に住まわせ詩人への道のサポートを行いました。興田はお礼に白秋の子息の家庭教師を行います。その後の興田はメキメキと頭角をあらわし、白秋や西條八十、野口雨情たちによって拓かれた童謡をさらに洗練させ、 芸術としての童謡、あるいは少年詩として読むに耐えうる〈うた〉へと高めることに心血を注ぎ、多くの作品を発表しました。後に日本児童文学者協会会長も務め、児童文学界の重鎮として尽力し、白秋のイズムを次の世代へと注ぐ人物として、多くの門下を育てました。

ことりはとっても うたがすき
かあさんよぶのも うたでよぶ
ぴぴぴぴ ぴ ちちちち ち ぴちくり ぴ

芥川也寸志が作曲をした「小鳥の歌」。興田準一の作品です。

北原白秋 埋葬場所: 10区 1種 2側
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/K/kitahara_h.html

興田準一 埋葬場所: 13区 1種 27側
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/Y/yoda_ju.html

【筆者プロフィール】
小村大樹(おむら・だいじゅ)
掃苔家・多磨霊園著名人研究家
1976年生まれ。1997年、大学生の時に多磨霊園の横にある石材屋でバイトをしたことをきっかけに多磨霊園に眠る著名人の散策を始める。1998年、当時インターネットが出始めた頃より「歴史が眠る多磨霊園」のホームページを制作。2018年開設20周年を迎える。
足で一基一基お墓を調査し、毎週1,2名ずつ更新をすることを20年間休まず実施(現在も継続中)。お墓をきっかけに眠っている著名人の生き様や時代背景の歴史を学ぶことをコンセプトにしており、掲載している人物は3000名を超える。
サイトを通じて多くの著名人のご遺族とも親交。歴史学者や郷土史家、出版社らの協力も惜しまず提供。一橋大学名誉教授の加藤哲郎『飽食した悪魔の戦後 731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)では論文として考察される。『有名人の墓巡礼』(扶桑社ムック)では一部執筆を担当。中学社会科・高校地理歴史の免許を取得し、通信制高校で教壇にも立つ。
『歴史を学ぶのは、過去の事実を知ることだけではない。歴史を学ぶのは、過去の事実について、過去の人がどう考えていたかを学ぶことだ』『私が著名人だと思った人物は全て著名人である』がモットー。

0

externallink関連リンク

◆歴史が眠る多磨霊園 http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)