第110話 言葉と投資

株の神様から投資の極意を教えてもらっているTさんは、お金の話は社会を生き抜いて行くのに大事なので、家族にもそのエッセンスを熱心に伝えています。今では、奥様のA子さん、高校生の長女Y、中学生の長男Sも興味を持ち、夕食時の話もいつの間にか投資の話につながったりするようです。


S:サッカーのワールドカップ、どこの国が優勝するか楽しみだな〜

A子:どこの国のサポーターもそうなんだろうけど、自国代表の試合は本当にドキドキして心臓に悪いわ。ピンチの時なんか、本当に神様にお祈りしたくなるわよね。

Y:パパの株の神様は、スポーツではご利益ないのかしら(笑)。

T:そうだね、分野が違うからね(笑)。でも、日本には、比較的簡単な神頼みの方法があるよ?

S:えっ、神社にお参りに行くんじゃなくて?

T:もっと簡単だよ。「言葉を選ぶ」ことだよ。

A子:あぁ、言霊(ことだま)ね。

T:その通り。日本では、言葉は「言(こと)」の「端(は)」。古くから「言」に「事」=事実を重ね合わせて、口に出せば現実化するという、言霊信仰がある。

S:「日本代表が勝つ」と言うと、そうなるということ?確かに簡単だけど。

Y:あっ、でもわかる気がする。「日本代表は負けるかもね」というと「縁起でもない」という空気になるわよね。

A子:昔は「雨、降るかもね」と言って、本当に雨が降ったりすると、「A子ちゃんが雨が振るかもって言ったからだ!」なんて嫌味を言われたりしたわよね。

T:「負けるかも」や「雨、降るかもね」といったことと、実際に負けたり、雨が降ったりしたこととは何の因果関係もないけど、口に出したがために現実化したという、古くからの言霊信仰の名残が、まだまだ日本にはあると思うよ。一方で、現実の社会では、本当に言葉を選ぶことが重要になってきているよ。

S:どういうこと?

T:例えば記者会見やコマーシャルなど、言葉の誤りを指摘されるならまだしも、意図していない意味合いをインターネット上であげつらわれて、“炎上”してしまうケースが多発しているよね。

Y:確かに、スポーツの世界でも、アメフトやレスリングでの記者会見の「言葉」が相当問題になっているものね。

A子:それに、インターネットが怖いのは、一旦“炎上”してしまうと、その事実がインターネット上にいつまでも残り続けて、簡単には消せないしね。

T:そう、投資の対象となるような企業の「言葉」の選び方も、ことさら重要度を増している。

Y:社長がインタビュー等で変なこと言ったりすると、ネットでも炎上して、自社の商品もすぐに売れなくなってしまうものね。

T:だから、企業のトップは言葉使いにはよほどの注意が必要で、IR(インベスター・リレーションズ)と言われる、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動は以前から重要とされてきたけど、それに加えて近年は、PR会社の働きが注目されているんだ。

S:PRって宣伝のことでしょ?

T:うん、それも含めてもう少し広い概念かな。PRとはパブリック・リレーションズの略で、国家・企業・団体などの組織体または個人が、一般大衆に対して情報を伝播したり、情報や意見を受け入れることを指すんだ。そしてPR会社は、その手助けをする。

A子:ママの友達が勤めている会社がそれだわ。企業のPR活動にスポットライトが当たるように工夫するほか、PRの仕方そのものをサポートするのよね。

T:そう。それに、もしも何か、企業が不祥事を起こした場合など、誰が、どんな服装で、どんな表情で、どんな言葉使いで謝罪すべきかまで、指導したりする。

S:そんな細かいことまで、サポートするんだ!

T:言葉だけじゃなくて「神は細部に宿る」というからね。何れにしても、投資に値する企業かどうかを見る一つのポイントとして、その会社の経営者や広報部門がどのような言葉を選択するか、細かい点まで配慮が行き届いているかは、年々大事なチェックポイントになっていると思うよ。

Y:国語で松尾芭蕉の「物いへば唇寒し秋の風」という句を習ったけど、あまり余計なことは言わない方がいい気もする。

S:そうすると何も伝わらないから加減が難しいね〜。

A子:ママは企業の経営者や広報のインタビューを見て、その会社の株価が上がるかどうかを見分ける術を研究してみようかしら。

T:それができたら本当に言葉の神様だね(笑)

(この項おわり。次回7/11掲載予定)

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