
栃木県足利市に、日本最古の学校として知られる足利学校があります。日本遺産に認定されている国指定史跡で、江戸時代の姿が復元され、当時の学生たちがどのようなところで勉強していたかを見学することができます。
創建については諸説ありますが、歴史の表舞台に登場するのが室町時代、1432年。応仁の乱以後、引き続く戦乱の中でも学問の灯を絶やすことなくともし続け、学徒3000人以上を輩出したとされています。すばらしい実績を残し、当時キリスト教の布教で日本に滞在していた有名な宣教師、フランシスコ・ザビエルにより、海外に紹介されたこともあるほどです。
中庸の精神や漢字試験を寺院のような足利学校で
足利学校は、想像以上の広さを持ち、戦国時代の館のように周囲を堀と土塁で囲まれています。イメージしている学校とは異なり、寺院のような雰囲気を感じます。堀や土塁に、戦が頻繁に行われた室町時代や戦国時代の背景を想い、その中で学問の大切さを説いていたことに大きな意義を感じます。
また建物の周りには、池もある日本庭園が併設され、学びの場として、快適な環境が保たれています。杏壇門をくぐると孔子座像が祀られている孔子廟にたどりつきます。江戸時代の学問は儒学ですが、儒学の中心的存在である孔子の銅像や、
孔子の著書である論語を体現した「中庸の精神」を体験できる水汲み場、また足利学校漢字試験を体験することができます。
「中庸の精神」とは、ほどほど、やりすぎを禁じる腹八分のような解釈があり、水を汲む体験をすることで、いかに水をこぼさず水平に保つことが難しいかを体験できます。
また、美しい庭園を見ながら当時の教室で漢字試験などを体験し、文化や歴史に触れることもできます。
足利学校近くの神社仏閣を訪れる「鑁阿寺」「足利織姫神社」
足利学校から徒歩5分のところに、鎌倉時代から室町時代にかけて隆盛を極め、足利の大日様と地元の人に信仰されている「鑁阿寺」があります。足利氏の館跡にして鎌倉時代からの寺院という二つの要素を併せ持ち、2013年に国宝建造物に指定されました。
また、少し足を延ばし、足利織物の守り神として、更には縁結びの神様として地元の人々に親しまれ、関東平野を見渡せる「足利織姫神社」を訪れました。青空に映える赤を基調とした織姫神社とそこから見える森高千里さんの歌で有名な渡良瀬橋を臨む風景に、室町から連綿と息づく歴史と昭和の郷愁を感じました。
夜の足利学校は幻想的な雰囲気の
日が暮れた後、「夜の足利学校」を訪れました。4月28日から30日には、「栃木デスティネーションキャンペーン」の一環で、夜間限定公開されていた為、方丈や孔子坐像等がライトアップされ、庭園は和傘で飾られていました。
足利銘仙柄の行灯がぼんやりと闇に浮かび、施設内は幻想的な雰囲気に。
遺蹟図書館では玄関前に張られたスクリーンに、孔子の生涯が31枚のガラス板に描かれたスライド形式で上映されていました。「銘仙柄の行灯で彩られた特別な足利学校を、ぜひ多くの人に見に来てほしい」との足利市の願いに呼応するかのように、多くの人々が訪れ特別な時間を楽しんでいました。
撮影・文 / Shimazaki