
栃木県笠間市の「笠間の陶炎祭(ひまつり)」の始まりは1982年。元々は、現在のような大規模なイベントではなく、個人作家、製陶所、販売店の垣根を越えて有志が集まり、36名の出展者が自分でテントを張って会場を用意して行うという、小規模かつアットホームなイベントでした。
益子陶器市の1966年に比べて歴史は浅いのですが、笠間焼を笠間の地域活性の軸にしたいという地元の方の熱意により、現在では30万人以上の人が訪れる大きなイベントになりました。
まるで音楽フェスのような開かれた空間
晴天の中、新緑に包まれた開放的な「笠間芸術の森公園」の坂道を歩いていくと、手造りの大きな看板「HIMATSURI」が迎えてくれます。
店舗のテント数は230店を超え、出店者ごとに個性の光る手造りの世界観のテントが立ち並び、ディスプレイも本格的で特徴があります。
子どもたちが粘土遊びやろくろ体験をできる「キッズランド」もあり、車の危険もない公園の中、楽しそうに走り回っていました。
中央ステージ前の広場を中心に、地元の食や世界各国の本格的な屋台が並んでおり、食べ歩きも楽しめます。
朴葉の上で焼かれたピザ、「朴葉ピザ」は、朴葉の香りが人気を呼び、大行列になっていました。
益子の陶器市が、風土と歴史を感じることのできる町のお祭りの雰囲気だとすると、笠間の陶器市は、より外へ向けて開かれた音楽フェスのような空間でした。
古くから日本人の生活に根ざしてものづくりを進めた益子と、海外に目を向け輸出を行っていた笠間と、それぞれの歴史が陶器市の雰囲気にも表れているようです。
自由な作風に溢れた笠間焼きの数々を堪能
笠間焼きは「特徴がないのが特徴」というぐらい本当に様々なタイプの器が並びます。自由な作風をつくれる笠間の気風は、若い陶芸家にも魅力があるようで、多くの若手陶芸家が自信の作品を丁寧に説明してくれました。
作品に触れながら、どんなところにこだわっているのか、どんな想いで作品づくりに取り組んでいるのかなど、「ものづくりの背景」を直接聞くことで、焼き物への興味、そして愛着が深まります。
好きな抹茶椀を選び、その器で抹茶を楽しめるコーナーや、
実際に陶芸家の作品で日本酒やビールを楽しめる場所など、生活と陶器の距離を縮める工夫があちこちでされていました。
益子と笠間は、「かさましこ」というネーミングで協力関係を結んでいます。毎日「関東やきものライナー」という直通バスが東京の秋葉原から出ていて、東京?笠間?益子を行き来することが可能です。益子と笠間の陶器市は、それぞれのその土地の風土と素敵な作品との出逢いを楽しみ、多くの作家と触れ合うことができるなど、かけがえのない貴重な旅となりました。
撮影・文 / Shimazaki
笠間の陶炎祭(ひまつり): http://www.himatsuri.net/