
草間彌生さんの作品は、世界中の人たちの心を捉えています。テート・モダンやポンピドゥ・センターなど名だたる美術館で開かれた個展は大盛況を博し、中南米、東南アジア、北欧でも大規模な巡回展が行われるほどの人気です。
また、「世界で最も人気のあるアーティスト」(2014年、英『アート・ニュースペーパー』紙)や「世界で最も影響力のある100人」(2016年、米『TIME』誌)に選出され、2016年の文化勲章も受章するなど、その勢いはとどまるところを知りません。世界各地で行われる草間彌生さんの展覧会は、入場者数の記録を次々と塗り替えています。
草間彌生さんの生誕の地・松本にて、2018年3月3日(土)から7月22日(日)まで子供の頃から現代までの作品を展示しその半生をたどる展覧会「草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE 私の愛のすべて」が開催されています。今回の展覧会は、松本だけで開催される完全オリジナルの特別展です。生誕の地である特徴を最大限に生かし、日本初公開となるミラールーム作品をはじめ、松本時代の貴重な絵画から最新作まで紹介され、草間彌生さんの集大成となる展示になっています。
89年前の1929年、松本市の種苗業を営む家で生を受けた草間彌生さん。今でこそ前衛芸術家としてその名を世界に轟かせていますが、幼少期から幻覚や幻聴に悩み、それから逃れるために描くことをはじめたのが原点のひとつでした。
美術館で迎えてくれるのは巨大な華のアート!美術館の前にある《幻の華》という作品です。その高さは10m以上あり、触手のように伸びた茎やその花は迫力満点です。
他にも美術館の建物に囲まれた中庭にある巨大な南瓜のオブジェや、
水玉模様の自動販売機など、
館内全体がクサマ・ワールドに包まれています。
さらに、松本市内を走っている草間彌生さんデザインのバスもありました。名前は《水玉乱舞》号といい、外のドット柄はもちろんですが、ナンバーも「・841(ヤヨイ)」と細かいところまでこだわって作られています。
美術館では、ロビーに巨大なバルーン作品”ヤヨイちゃん”と”トコトン”があり、床には彼女たちの足跡で順路を教えてくれるユニークなデコレーションがされていました。
作品の中に入って体験できるインスタレーション、鏡を使ってどこまでも広がる空間に自分も入り込む不思議な世界や、暗いところから幻想的なイメージが重なる神秘的な光景と草間ワールドに引き込まれます。
さらに大きな展示室に入ると、「わが永遠の魂」68点が壁一面にずらりと並んでいます。これらは現在も草間さんが描き続けている見ごたえ抜群の最新シリーズで、写真撮影もOKです。最後に、日本初公開のミラールーム《南瓜へのつきることのない愛のすべて》が登場します。鏡に覆われた小部屋のなかに20秒間入り、無限のカボチャワールドを体感できます。
街の空気感、作品の歴史、まさに彼女の集大成ともいえる125日間。本展は松本のみでの開催です。草間さんが表現する作品の背景にあるもの、そして世界に発信し続ける強い意志の一端に触れることができる貴重な“出会い”を体感できるでしょう。
撮影・文 / Shimazaki