
オホーツク海に面した流氷の街紋別市に隣接する滝上町では、桜の季節が終わる頃、山肌が一面ピンク色に染まります。北国の遅い春の訪れを華やかに祝うかのように、芝桜が一面に咲き誇ります。
まるでピンクの大海原を歩くような日本最大規模の芝桜
人口約3,000人の町:滝上町にある滝上公園は、芝桜の名所として知られ、国内だけでなく海外からの多くの観光客を魅了しています。芝桜とは北アメリカ原産のハナシノブ科の多年草のことで、フロックスの一種です。
芝桜が植えられている所はかつて、桜の名所であった場所だったということです。ピーク時には1,000本もの桜が植えられていたそうですが、雪や台風、病害虫などにより徐々に傷んでいったのです。そこで当日の公園の管理人が、心惹かれた芝桜を”みかん箱1つ分”、公園の片隅に植えたことが滝上町芝桜公園の始まりとなりました。芝桜は病害虫に強く、町民や町の努力により毎年増殖し、今では10万平方メートルの大群落になりました。そのスケールは、日本最大規模を誇ります。
札幌市から道央自動車道を経由して3時間半、滝上町に近づくと、遠くからでも山一面の桜色に目が奪われます。澄んだ青空とまぶしい新緑が、一面の芝桜と絶妙なコントラストを編み出し、あまりにも美しく、見る者を圧倒します。起伏に富んだ斜面はまるでピンクの大海原を歩いているかのような気持ちになります。
小さくてかわいらしい花々は、ピンクの鮮やかさばかりでなく、甘い香りで包まれ、この丘陵地のすそ野を流れる渓谷とともに、旅人を夢幻の世界へと誘ってくれます。
もう一つの芝桜の景勝地「ひがしもこと芝桜公園」
オホーツクの美しい海岸線を走り、もう一つの芝桜の景勝地である「ひがしもこと芝桜公園」に向かいます。新緑の山沿いの道から突如視界が広がり、目の覚めるような鮮やかなピンク色に染まる丘陵が見えてきました。始まりは地元の中鉢末吉さんが苗を一株ずつ植え始め、約8年もかかって作り上げたものです。この丘陵地はとても急勾配のため苗を植える機械を持ち込むことは出来ず、毎日毎日手作業で植えていったそうです。その後、多くの人がこの「ひがしもこと芝桜公園」を育て支え、今ではオホーツク地方東藻琴の名所となっています。広い敷地内には芝桜に覆われた緩やかな丘があり、下から見上げる景色、上から眺める景色が壮観だと話題になっています。
展望台や「山津見神社」のピンク色の鳥居など、園内には見どころが盛りだくさんで、
小さな芝桜の花が丘陵地を覆いつくし、大自然のなかにピンクの絨毯が敷き詰められ、丘に絵を描いたような大パノラマの絶景です。
「滝上公園」と「ひがしもこと芝桜公園」はどちらも、厳しい自然環境の中、試行錯誤で美しさを追求した、たゆまない努力の結晶です。冬に白い世界が広がるオホーツクの地が、春に桜色に鮮やかに彩られ、もうすぐ色とりどりの初夏の花々が咲き誇り、様々な色模様が訪れる人々を魅了することでしょう。
滝上 芝ざくら祭り:http://town.takinoue.hokkaido.jp/shibazakura_festival/
ひがしもこと芝桜公園:http://www.shibazakura.net/
筆者:澤口美穂。幼少期より海外志向が強く、これまでの訪問国数は30か国以上。平成28年生活拠点を東京から札幌に移し、ヨーロッパ系企業日本法人で様々な国の人々と共に働いてきた経験を活かし、自分の想いを形にした新しいビジネスと人生のセカンドステージを構築中。