
宮城県の景勝地である松島は、松尾芭蕉も息をのむほどの美しさもさることながら、霊場としての厳かさも感じられる場所です。本堂などが国宝の「瑞巌寺」に向かう参道では、東日本大震災の津波による被害の修復が行われていました。
震災時の津波による塩害で杉並木が甚大な被害を受け、杉が300本も枯れ伐採されていました。現在も参道と周囲の再建に向けて、たゆまない努力が続けられています。
瑞巌寺は、1609年に伊達政宗によって建造された、桃山時代の真髄を表している荘厳な建物です。2008年より始まった「平成の大修理」は、昨年の2017年11月をもって工事が終了し、今年の3月には完了し、6月24日に落慶法要を迎えるということです。
伊達政宗が持ち帰ったという臥竜梅は、見事に紅白の花を咲かせていました。警備の方から、瑞巌寺の本堂裏にある枝垂れ桜が素晴らしいですよとお話しをいただき、正面の裏手に廻ると、すき通る青空の中、桜が満開の花を咲かせていました。
まるで「平成の大修理」の完了を祝うかのごとく壮麗な美しさでした。
正保4(1647)年に伊達政宗の孫・光宗の霊廟として開山した「円通院」の前にもすばらしい枝垂れ桜が、日に照らされていました。
茅葺屋根の山門をくぐり、「縁結び観音」を後にすると現れるのが麗しい石庭です。
この石庭は松島湾を表現した「天の庭」と人生を表現した「地の庭」で構成されています。
本堂の前の立派な庭園は、「遠州の庭」といい、江戸時代の代表的な作庭家・小堀遠州が手掛けたものといわれています。
心字の池が配され、カエデの木々が彩る庭園に、若草色の竹林が青空に映えます。秋が深まると庭は真っ赤に染まり、美しさは更に増すことでしょう。緑あふれる季節、雪が降り積もる季節もそれぞれ趣があり、四季の移り変わりを肌で感じることができます。
円通院の奥には伊達光宗を祀る「三慧殿」があます。光宗の父・忠宗(二代仙台藩主)が、息子の死を悼み建立したものです。
霊屋建築としては宮城県最古といわれ、国の重要文化財に指定されています。
三慧殿はところどころ新緑の苔に囲まれ、まぶしい光に反射し神々しく輝いていました。
約700年前の洞窟群は、大きな変化を遂げていく廻りの世界とは別世界の如く、幽玄の時を静けさの中に刻んでいました。
取材・撮影・文 / Shimazaki