
松島海岸駅の南脇から北西に伸びる県道144号線の少々きつい坂道を登っていくと、「西行戻しの松公園」があります。260本余りの桜がある桜の名所で、西行法師が諸国行脚の折り、松の大木の下で童子(老翁との説も)と禅問答をして敗れ、松島詣でを諦めたという由来の地でもあります。
白衣観音がある展望台からの眺めは、桜並木と松島湾の調和が美しく、さらに満開に咲いた白木蓮が彩りを添えます。松島の洗練された風景が、額に入れた名画のように納まり、静けさを際立たせます。
公園内にガラス張りの見晴らしの良いカフェがありました。海岸沿いの松華堂菓子店が運営しているカフェ 「le Roma ル・ロマン」です。
2007年の6月から東日本大震災までは「カフェ ロワン」として営業していたようですが、建物の被災によって閉鎖となり、惜しむ声があがっていました。「カフェ・ロワン」が「ル・ロマン」として、損傷した建物を新たにして再スタートを切ったのが、2015年10月。
開放的でスタイリッシュな内装のカフェですが、観光客に限らず、普段使いのカフェとして地元の方々に引き続き愛されているようです。
平日でも、多くの人が訪れていました。珈琲の香りはすばらしく、手作りのチーズケーキは濃厚で、窓際で松島の絶景を見ながら、至福の時間を過ごすことができました。
松島町も地震や津波により、遊覧船をはじめ、店舗や施設などが被害を受けましたが、松島湾の島々に助けられ、奇跡的に壊滅を免れることができたとのことです。海岸沿いでは、より安全な整備に向けて、たゆまない再生への努力が続いていました。
「東北の震災復興のためには、松島がいち早く復旧し、観光客や復興支援の人々の受け皿とならなければ
ならない」との想いから復旧を急いだ松島町民、漁業者、農業者、観光事業者など多くの方々の使命感を強く感じました。
早朝、松島の海から昇る朝日を見たくなり、「西行戻しの松公園」を訪ねました。多くの観光客、地元の方々が同じ思いで日の出を待ちましたが、東の空に雲が残り海からの日の出とはいきませんでした。
しかし、雲の上から出た太陽が白木蓮、桜、そして松島の海を照らし、それは、その場にいた誰もが共有する忘れることのできない輝きでした。
(つづく)