
「歴史」と「挑戦」。この言葉は厚岸に立ち寄ると必然と感じることができるられるワードです。
厚岸町(あっけしちょう)は、東北海道では最も早く開かれなました、松前藩によるアッケシ場所の開設は寛永年間(1624年~1643年)のことで、東北海道開拓の玄関口を目的としたものでした。
こうした長い歴史を背景に、いまや北海道のみならず全国のグルメをうならす牡蠣をはじめとした海の幸や、古くから発展してきた酪農業の成果である乳製品のレベルも非常に高い場所です。厚岸駅開業(1917年)と同時に営業を開始されたという氏家待合所の風味豊かな牡蠣めし、森高牧場の新鮮でありながらコクのあるアイスクリーム、そして北海道で最も美味しい食事が食べることができると言われている道の駅(コンキリエ)の存在等、歴史的な背景から発展した魅力がいっぱいです。旅人は、雄大な自然や道内初の海上橋の赤色の記憶とともに、豊かな食の恵みに舌の記憶を残すのではないでしょうか。
更に厚岸では新たな夢のつぼみが育まれています。ウイスキーの蒸留です。ウイスキーづくりには冷涼で湿潤な気候、そして一定の寒暖差が不可欠ですが、その点でスコットランドに似た雄大な風景が重なる厚岸は広大な湿地に囲まれ、夏の気温は25度前後、冬はマイナス20度近くまで冷え込む理想的な環境です。
またウイスキーに用いられる仕込み水はピート層を通った軟水であり、潮を含んだ海霧がただよう様は、シングルモルトの聖地と呼ばれるスコットランド・アイラ島に良く似た土地と言えるのです。更に周辺からは香り付けに欠かせないピート(泥炭)も取れ、厚岸町内での大麦の生産も始まっています。町内の森林での樹齢200年を優に超えるミズナラの試験的伐採も、着実に進んでいます。厚岸産大麦、厚岸産ピートとピート層を通った水源、厚岸産ミズナラ樽、厚岸湾の海霧に包まれる熟成庫、それらすべてを使用した厚岸産モルトウイスキーを、蒸溜所では、“AKKESHI ALL STAR(S)”と呼んでいます。
2016年の秋に本格蒸留を始め、いよいよ厚岸ウイスキーが、第1弾として2月27日に初出荷されました。今回リリースされたのは、麦芽を作る際にピートを使用していないノンピートの原酒をバーボン樽で、5カ月~14カ月熟成させたものです。厚岸蒸留所には、異なるバックグランドを持ち、並々ならぬ情熱をウイスキーに傾ける4人のクラフトマンがいます。まさに蒸留所の設立から初の蒸留、発酵、熟成とクラフトマンたちの努力が形になった渾身のデビュー作なのです。早々と発売前に販売予定数を上回る注文が殺到し入手は難しく、2018年8月、2019年2月、2019年8月とこれからの発売が待たれます。年月を重ねるごとに味が変わるウイスキー。独特のスモーキーな香りがするアイラモルトやアッケシモルトと牡蠣やチーズのマリアージュを堪能できる日も近いことでしょう。
※画像は厚岸蒸留所 公式フェイスブックより
筆者:澤口美穂。カナダへのワーキングホリデー、グアテマラ留学含め、約2年半北米、中米、南米を中心に周遊。帰国後、ヨーロッパ本社の外資系企業日本法人2社で勤務し、アジア、ヨーロッパへ数多く出張。20代からの訪問国数は約30か国以上。平成28年、生活拠点を東京から札幌に移す。様々な国の人々と共に働いてきた経験や自分の想いを形にした新しいビジネスと人生のセカンドステージを構築中。