
網走から斜里を結ぶ国道244号線は、夏はオホーツクブルーと呼ばれる真っ青な海を背景に、原生花園のエゾスカシユリやエゾキスゲ、ハマナスなどの花々が咲き誇り、冬は流氷が真白き世界へ誘います。斜里岳及び遠く知床連山は季節により趣を変え、旅人の旅情を掻き立てるのです。
2月~3月は、その日の風の向きにより、流氷が行ったり来たり。流氷は、中国とロシアの国境を流れる極東最大の大河アムール川からオホーツク海に注ぐ淡水が氷結し、風や海流に乗って徐々に広がりながら南下、1月下旬頃には北海道のオホーツク海沿岸まで覆い尽くします。波の音も消え、オホーツク海は白い大陸と化し神秘的な光景に変貌します。
今まで海岸から眺め満足していましたが、網走の流氷観光で人気なのが流氷観光砕氷船「おーろら」で初めて流氷クルーズを体験しました。発着ターミナルは網走港近くの道の駅「流氷街道網走」にあり、無料駐車場や観光案内所、レストランなども完備。大型観光船なので揺れも少なく、船内は暖かく快適に過ごせます。
いざ流氷の海へ出航!砕氷船は普通の船の倍ほどの厚さの船底を持ち、その重力で氷を割り前に進みます。分厚い氷をものともせず突き進み、船底が氷塊にぶつかる音、船全体が振動する迫力は他では体験できません。流氷の氷が光により表情を変え、強烈な自然の雄大さの印象を抱えて船を降りることができました。
国道244号線を知床方面へ車で20分ほど走ると、オホーツク海に一番近い駅で有名なJR釧網本線の「北浜駅」。オホーツク海沿いの駅舎は無人となり、今ではそれぞれ役割を変え、レストランやカフェ、食堂と新たな楽しみを旅人に提供しています。北浜駅の「停車場」では、フレンチ出身のシェフがつくるオムライスやポークチャップ、藻琴駅の「トロッコ」では、映画で錦戸亮さんと北川景子さんが食べていたカレーがおすすめです。
今回は、冷え切った身体を温めるため止別駅の「えきばしゃ」へと向かいました。醤油ラーメンも、シンプルで懐かしくやさしい味で美味しいですが、ここではツーラーメンが大人気です。スープは塩。具は白髪ネギがたっぷりと盛り付けられており、下に生姜の風味が利いた自家製チャーシューの短冊切りを忍ばせてあるシンプルな構成。スープは鶏ガラがメインで塩味が丁度よく、何とも奥深い美味しさでスープを啜るレンゲが止まりません。このラーメンの名の由来は、2種の具から来るツーと、通好みのラーメンのツーを掛け合わせているとのことです。
すっかり身体も心も温まり、知床に向けて車を走らせます。キツネが流氷を眺める丘に佇んでいました。遠く目を向ける先に何を見て、何を想うのだろう。流氷が去り、オホーツクの海が白から青に変わる遠い春を想っているのでしょうか。勝手な想像を巡らすのも、旅の一つの楽しみみです。
筆者:澤口美穂。カナダへのワーキングホリデー、グアテマラ留学含め、約2年半北米、中米、南米を中心に周遊。帰国後、ヨーロッパ本社の外資系企業日本法人2社で勤務し、アジア、ヨーロッパへ数多く出張。20代からの訪問国数は約30か国以上。平成28年、生活拠点を東京から札幌に移す。様々な国の人々と共に働いてきた経験や自分の想いを形にした新しいビジネスと人生のセカンドステージを構築中。