革新的「パッシブハウス」でホウレン草栽培

中小事業者等に対する事業再生や成長支援等を通じ、地域経済の活性化を図っている株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)は、2016年4月に起きた熊本地震において被災した事業者の復旧・復興支援を目的として、九州広域復興支援ファンドを組成しました。前回、REVICの土屋立暢さんに、熊本での復旧・復興支援活動や熊本の魅力についてお話を伺いました。今回は、ファンド投資先の企業の『革新的なホウレン草栽培』について、詳しくお話を伺います。

REVICは、2016年4月の熊本地震の後、翌5月には熊本事務所を開設し、被災地の地域金融機関や地方公共団体を訪問して被災状況やニーズの把握に努めたそうです。7月には九州の全地方銀行、ゆうちょ銀行、及び地域経済活性化支援機構が、震災により直接的または間接的に被害を受けた事業者向けに「九州広域復興支援ファンド」を組成しました。ファンド総額は約116億円にものぼり、その投資を通じて、九州に本店・支店等を持つ事業者の復興と成長を支援しているそうです。

ファンド投資先1号となった株式会社ビタミン・カラーは、熊本地震前より、地元の大手仲卸事業者である藤本物産の藤本社長、松﨑現社長、柏野取締役が、「パッシブハウス」を使用したホウレン草の周年栽培の構想を練っていました。具体的に事業の構想を固め、資金調達を始めた矢先に熊本地震が起こり、事業構想は一旦中断となってしまいました。震災から5か月が経ち、再び事業をスタートする際にREVICに相談が寄せられ、そこから協議を重ね、加速度的に構想を実現することになったそうです。


(写真は収穫時に折れた葉などを取り除く農業者)

冬の作物であるホウレン草は、高地の冷涼な気温でなければ夏場は生産ができず、夏場の九州ではほとんど生産されていません。そこで、農業県熊本においても革新的である「パッシブハウス」の導入案がもちあがりました。「パッシブハウス」とは、ハウス内で光・水・風という3要素をセンシング技術で自動制御し、ホウレン草等の葉物野菜に最適な栽培環境を作る仕組みです。このシステムのおかげで葉物野菜の周年栽培が可能になり、夏場でもホウレン草の生産ができるそうです。

投資後も豪雨や台風、現場で起こる様々な問題の対応に追われつつも、着実に一歩一歩構想実現に向けて進んでいるそうです。「パッシブハウスは生産者にとって、生産性の向上、効率化を実現するシステムです。生産が難しいホウレン草を、年間を通じて全国の皆さまに供給できるよう、引き続きファンドも支援をしていきます。」と、土屋さんは話します。


(写真は収穫時の作業風景)

気温や天候に敏感な葉物野菜は生産が難しいだけでなく、農家の高齢化も相まって生産者が減少しているのが現状です。その結果、近年の市場価格の高騰が引き起こされています。ファンドを通じ、画期的なシステム導入の試みが、今後の日本の農業が抱える課題解決の一助となることに期待が高まります。


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