
長野県を旅すると、旅館やレストランでの食事には必ずと言ってよいほど野沢菜漬けが付いてくるものです。四季を通じ、長野県内の各家庭でも、頻繁に野沢菜漬けが食卓に上ります。このように、野沢菜漬けは長野県の郷土食として親しまれています。
材料の野沢菜は、もともとは天王寺蕪という蕪の一種でした。約250年前のこと、野沢温泉村の健命寺の住職が、京都遊学の折に、天王寺蕪の種子を持ち帰って育てたそうです。すると、関西の気候とは異なる積雪の多いこの地で突然変異した蕪は、葉柄ばかり立派なものになりました。これが野沢菜のはじまりと言われています。
野沢菜の収穫と漬け込み作業のはじまる10月下旬になると、県内の直売所では、長さ1メートルにもなる野沢菜が山積みされた光景を見ることができます。家庭向け野沢菜漬けの漬け込み用です。
仕上がった野沢菜漬けは、浅漬けで食べるのはもちろんですが、漬け込みから2ヶ月ほど経つと、乳酸発酵が進んで酸味がほどよく回り、食べごろになります。野沢菜漬けは、漬物として食すだけではなく、炒めて「おやき」の具にしたり、パスタやチャーハンに入れたりと、様々な料理に使われています。
栄養成分も優れていて、腸にいい植物性乳酸菌をたくさん含んでいるとされています。浅漬けよりも発酵の進んだ古漬けの方が植物性乳酸菌が豊富です。さらに、善玉菌の大好物である食物繊維や、カリウム、ナトリウム、亜鉛、抗酸化作用のあるβカロテン、ビタミンC、ビタミンKなども豊富に含まれています。
平成30年の1月には、信州大学農学部の田中沙智助教(食品免疫機能学)によって、野沢菜に免疫細胞活性化効果のあることが、マウスの実験で初めて確認されました。人が野沢菜を食べた場合でも、免疫力アップ効果が認められるのかどうか、今後の研究による科学的解明が待たれています。