奈良市で2022年、安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第7回公判が13日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を信仰する被告の母親が弁護側証人として出廷し、計1億円に上る献金をした理由について「長男の命が助かると思った」などと語った。
弁護団によると、被告は母親との接見を拒否しており、事件後に2人が顔を合わせるのは初めて。母親と傍聴席との間には遮蔽(しゃへい)板が置かれ、表情をうかがうことはできなかった。
証言の冒頭、母親は「次男の徹也が大変な事件を起こしたことを心よりおわび申し上げます」と、声を詰まらせながら謝罪した。
証言によると、母親は1991年8月に入信。信者に「家系図を見たらいい」と勧誘され、施設に出向くと、夫の自殺や被告の兄の大病など、度重なる不幸について「人類の堕落で神様の救済がうまくいかなくなった。2000万円の浄財が必要」と説明を受けた。同月末、夫に掛けられていた生命保険を元手に献金し、翌年3月に追加で3000万円を献金した。
「長男の命がどうなるか分からず、5000万円払えば助かると思った」。その後、「自殺しているのであの世は苦しい」と聞き、夫の供養として1000万円を献金した。
同居していた父が亡くなると、住んでいた家などを4000万円で売却し、献金に充てた。当時、被告は18歳で大学進学の時期だったが、兄が自殺をほのめかしており「大学に行くことに意味がない。それよりも(長男のために)献金することが大事だと思った」と話した。
〔写真説明〕奈良地裁=奈良市

