東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市雄勝町に、食の拠点としてワイン醸造所を備え、ブドウの植樹や収穫なども体験できる新施設「モリウミアス マリン&フード」が15日、オープンする。震災以降、町の人口は減少の一途をたどっている。運営団体のトップは、地域に活気を取り戻すための「新たなエンジンにしたい」と意気込む。
雄勝町は震災後、中心部が災害危険区域に指定され、人が住めなくなった。かつて4000人を超えた人口は、約970人(10月末時点)にまで減少。施設は地域を緑でよみがえらせ、人を呼び込みたいとの思いを込め、市と日本財団の支援を受け建設された。
地下に貯蔵庫もあるワイン醸造所は、年間約3万本を生産する能力を持ち、2026年夏ごろ、山形県産のブドウを使ってワインの製造を開始する。醸造所に隣接する畑で育てたブドウで雄勝産ワインの生産準備も進めており、30年春に施設内ショップでの販売も目指す。
施設では、ブドウの苗の植樹や収穫なども体験できる。校外学習で訪れた子どもたちに、ブドウの皮に含まれる酵母を使ったパン作りも体験してもらう予定だ。
地元産のカキやタコ、サケを使ったカレーなどを提供するカフェの運営や、これまで利用されてこなかった魚介類の加工食品の開発などにも取り組む。
施設を運営するのは、子ども向けの農業体験プログラムなどに取り組む一般社団法人モリウミアスファーム。オープンに向け、既に県内の別の自治体からの移住者を含め、従業員2人も雇った。代表理事の油井元太郎さん(50)は「ブドウの木は何十年も育つので、未来の町がどうなっているかと思いをはせられる。ワインやパン作りはコミュニティーづくりのきっかけとなり、町の未来は必ず明るくなる」と力を込める。
10月に開かれた施設のプレオープンイベントには約100人が訪れた。施設は旧雄勝中学校跡地に建てられている。震災当時、同校校長だった佐藤淳一さん(65)は「14年前はここに笑い声が飛び交っていた。新たな町の顔となり、人が集まるようになればすてきだ」と目を細めた。
〔写真説明〕新施設「モリウミアス マリン&フード」に備えられるワイン醸造所=10月19日、宮城県石巻市雄勝地区
〔写真説明〕新施設「モリウミアス マリン&フード」のワイン醸造所を説明する一般社団法人モリウミアスファームの油井元太郎代表理事=10月19日、宮城県石巻市雄勝地区
〔写真説明〕施設の説明をする一般社団法人モリウミアスファーム代表理事の油井元太郎さん=10月19日、宮城県石巻市雄勝地区
〔写真説明〕新たにオープンする食の拠点「モリウミアス マリン&フード」=10月19日、宮城県石巻市雄勝地区

