7戦連続無失点も、2戦連続無得点…名古屋が抱える攻撃の課題とは?

 好事魔多しとは少し違うが、やはり物事は一筋縄ではいかないものだ。怒涛の開幕6連勝から一転、名古屋は2試合連続でスコアレスドローと不完全燃焼の戦いを重ねている。無失点試合はこれで7戦連続と堅牢さを保っていても、勝点3を得るには得点が一つ以上は必要だ。3月は稲垣祥の大活躍があったが、ボランチにエースストライカーの役割を求めても仕方がない。代表ウィークが明けて“第2クール”に突入したリーグの中で、名古屋は改めて難題と直面している。

 とはいえ湘南との戦いはイレギュラーなものでもあった。立ち上がりから中盤でボールを引っかけ、ショートカウンターを何度も起こしてゴールに迫っていたのは名古屋であり、ビルドアップに緩慢さが見られた湘南は推進力のあるサイドにボールを託せずツートップが孤立していた。28分には名古新太郎のトリッキーなタッチから町野修斗が決定機を迎えたが、名古屋の守護神ランゲラックの圧にも負けてシュートは枠外へ。「マチのが入っていれば試合はどうなっていたか」と浮嶋敏監督は残念そうに振り返ったが、試合を通じて湘南が明確な得点機にできたのはこれ一度のみだったからそれも頷ける。湘南はその後、40分、43分と立て続けに三幸秀稔が警告を喰らって前半のうちに退場。試合の半分を10人で戦うことになり、必然的に勝点1を死守する戦いへシフトしたからなおさらだ。そしてまさに専守防衛の相手を崩すという、ある意味想定外の後半を名古屋は“強いられた”。

 数で押し込む、あるいは攻めの姿勢をもって押し切ってしまう、という姿勢を見せるのだろうか。珍しくはないが準備に織り込むことはない数的優位の試合に、名古屋がどうアクションを起こすのかは興味深かった。スタイルからすれば前がかることはないチームで、とりわけ守備のバランスを崩すことなど絶対にしない監督だからこそ、アウェイで10人を相手にした時に何を見せるかはレアケースとしての価値があった。結果から言えば名古屋がしたことはいつも通りのベーシックそのもの。相馬勇紀と成瀬竣平は恐らくコンディションの観点から早めの交代を準備しており、マテウスも脚の状態を前半から気にしていたので、前田は15分ほどから一人アップを開始していた。次の交代が85分で起用した選手が木本恭生と3節柏戦以来の出場となった阿部浩之で、スコアを動かそうというよりは安定感を足した上でセットプレーなどにチャンスがあれば、という采配だった。

「まず失点をしないようにしっかりと守るためのベースをそれぞれの試合に対して準備できるか。そして相手のどのような部分にダメージを与えていくか。割合としては“絶対にやられてはいけない”というところをベースに試合を作っていく」(フィッカデンティ監督)。名古屋の優先順位がこうである以上、相手のどこにダメージを与えていくかという部分が“ゴール前に人数をかけて守る”となってしまった湘南との戦いは、名古屋の攻撃の難易度を上げた。11対11での駆け引きは良好に推移していただけに、それを指揮官は残念がりもした。「今日はああいうシチュエーションになったことで、相手がやりきった」。守備の哲学に篤い名古屋は最後には、湘南を称えている。GKの谷晃生は「一人少なくなってもゴール前の人数は変わらない。守れると思っていた」と言い、自らもクロス対応でチームを大いに救った。確かに、湘南の守り勝ち(引き分けだが)だったのかもしれない。

 ただ、名古屋の攻撃陣には火が点いた感もある。後半からの出場で右サイドでのチャンスメイクに奮起した前田は「皆さんの目にどう映っていたかはわかりませんが、自分としては物足りない。正直何もできなかったぐらい」と眼をギラつかせた。ドリブルの縦突破、相棒のサイドバック宮原を走らせるパス、カットインしてのシュートとシュート性のクロスと多くの選択肢をもって決勝点を生もうと努力したが、残念と言うならこの動きに対して周囲が受け身だったことだ。相手は人数をかけてゴール前を固めているが、前田は個の仕掛けでそれに立ち向かっていた。無闇に人数をかけることはコンセプトとしてしなくとも、前線の選手の距離感や動きのバリエーションとして、まだまだ探れる部分はあったはずだ。「攻撃のバリエーションを増やさなければという危機感を僕もみんなも持っている」。そのヒントは湘南との後半にも何度か見えた。

 数的優位の後半45分で名古屋のチャンスとなったのは、複数の選手が速い連係を見せた時だった。両サイドハーフが片方のサイドで崩しに絡むなど変則的な攻撃への人数のかけ方は開幕当初から実行しているが、相手が一人少なくゴール前から出てこないならばもう一枚、の選択肢をとってもリスクマネジメントはできたはずだ。そもそも走力には自信を持っているチームで、ボランチの選手たちはかなりの広範囲をカバーできる機動力もある。サイドを活かすための中央での攻め、FWに少ないシュートの積極性、守備を疎かにせず攻撃の厚みを出す工夫にも余地はある。逆に考えれば名古屋には、伸びしろがまだまだ豊富に残されているということでもある。

 無失点を狙って完遂できるチームだけに、ここからしばらくは攻撃がテーマにもなっていくのか。一人多い状況でもゴールをこじ開けられなかったことで、名古屋の抱える課題はより際立っても見えた。

文=今井雄一朗

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