警視庁では毎年3頭ほどの子犬を購入し、警察犬に育て上げる。今夏から訓練を始めた1歳9カ月のジャーマンシェパード「モニ(フサフサ号)」もそのうちの1頭だ。ベテラン担当者らが全国を回って警察犬としての素質を見極めるが、能力を引き出せるかはハンドラーの力量にかかっているという。
同庁鑑識課は、子犬の販売やしつけを行っている全国各地の民間訓練所などと関係を構築。血統や性格が優れた子犬の情報が入れば、直接担当者が現地に赴き、犬と対面して適性を見極める。
犬は個体によって、骨格が整った「展覧会タイプ」と、嗅覚などが優れた「訓練タイプ」に分かれ、警察犬は通常、訓練タイプから選ばれる。特に担当者が注目するのは、親犬が警察犬として活躍したり、大会で優秀な成績を収めたりした実績があるかどうか。親の高い能力を受け継ぐ傾向があるとされるためだ。ほかにも、きょうだいの中で真っ先に餌やおもちゃに飛びつく犬は、物事への「欲」や執着心が強く、訓練や捜索活動に臨む際の集中力も高いと考えられているという。
モニは昨年2月、千葉県内の訓練所で生まれた。父犬は遺留品の臭いから犯人の逃走経路を割り出す「足跡追及」の能力を競う全国大会で、上位に入賞した実力の持ち主。きょうだい10頭の中でも、母犬譲りの意欲の高い性格という。
同年11月に警察犬係に配属された新米ハンドラーの立石彩水巡査長(30)は今年2月、通算15年以上のベテランハンドラー流茂紀警部補(55)と共に訓練所を訪れモニと初対面した。
立石巡査長はモニの第一印象について「私が近づくと走って逃げて訓練士の後ろに隠れてしまうような臆病な子だった。慣れてくれるか不安もあった」と振り返る。それでも2回3回と足を運ぶうちに、「少しずつ近寄ってくれるようになった」といい、モニを相棒に選んだ。
流警部補は「最終的にはハンドラーの直感で選ぶしかない」と後輩の決断を尊重する。その上で立石巡査長とモニについて「恥ずかしがり屋なところが似ている」と目を細める。「犬の能力を開花させるも駄目にするもハンドラー次第」。流警部補は今後の成長に期待を込めた。
〔写真説明〕訓練の合間に戯れる警視庁鑑識課警察犬係の立石彩水巡査長とシェパードのモニ=8月29日、東京都東大和市
〔写真説明〕取材陣を前に警戒する警視庁の訓練所に来て約2カ月のモニ=8月29日、東京都東大和市
〔写真説明〕6月からペアを組んだ警視庁鑑識課警察犬係の立石彩水巡査長とシェパードのモニ=8月29日、東京都東大和市
〔写真説明〕取材に応じる警視庁鑑識課警察犬係の流茂紀警部補=8月29日、東京都東大和市

